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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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17

空流に会ったら、まず何をしようか。
そう考える事で、月曜日までの数日間を過ごした。

普段住んでいる東京のマンションの部屋に空流を迎えて、一緒に住みながら空流が高校へ通う、というのはどうだろう。
中学校でもかなり良い成績を維持していたようだったから少しの遅れくらい大した事ないだろう。
とにかく、空流の望むことはなんでもかなえたい。

一緒に住む事になったら、部屋に入れる家具は何が必要だろう。
ベッドと勉強机はもちろん、パソコンやオーディオ。
本が好きだといっていたから本棚や、流行っている本を取り寄せようか。

そんなことを考えながら、数日間という長い時間を乗り切った。
記入を終えた家具の注文表まで机の上にある。

そして迎えた月曜日。
午前中に大切な会議があるというのがどうにも面倒で仕方がない。
許されるのならば、そんなものは放り出して今すぐにでも空流を迎えに行きたいのに。

ネクタイを締めて、加川に送り出される。
この会議が終わって、後始末が住んだらもう東京へと帰らねばならない。
あと2日ほどで加川とはまたしばらくの別れ。

「行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」

加川もそれがわかっているのが、ここ数日間はいつも以上に気を使ってくれているのがわかった。

「午後に人が来る約束がある。それまでには帰りたいと思う」
「はい」

午後に来る人とは誰なのか、そんなことは聞かずに、加川は嬉しそうに微笑むだけだった。

車に乗っている途中で、電話が鳴る。
俊弥からだった。

「俊弥か?」
「そう。実は今、病院にいる」
「今日は休みじゃなかったのか?」
「そうだけど、今朝、急に呼び出しの電話がかかってきてさ」
「何かあったのか?」
「いや、何も。誰も俺のこと呼び出してなんかいないって」
「それは変だな」
「でも何もなくてよかった。これから空流君を迎えに行く。少し予定より遅れるかもしれないけど」
「わかった、待ってる」

そういって電話を切る。
何か悪い予感が胸を通り過ぎる気がしたけれど、さして気に留めなかった。

午後にはきっと、空流の好きだったお茶とお菓子とを用意して加川が待っているだろう。
それが楽しみで仕方がなかった。

ホテルへと到着し、オープン後の業績とにらみ合いをしながら会議に出席する。
今後の経営方針や改善点などを代表者がつらつらと並べ立てるのをひたすら聞いていた。
それに矛盾点があれば指摘し、さらなる改善を要求する。
苦い顔をされるのはいつものこと。

ようやっと会議が終了し、これで伊豆での仕事は終わり。
なかなか上手く行った仕事だったと思う。
今日中にここの仕事場を片付け、明日には荷物を運び出し東京へ帰る。
明日東京へ帰るのならば、空流も一緒に連れて行けば丁度良い。

仕事場へ戻って、携帯電話の電源を入れる。
3時間も電源を切っていたのだから何も連絡が入っていないわけはないと思ったけれども、予想だにしないものを目にするとも思っていなかった。
着信が5件。全て俊弥から。
全て同じような時間にかかってきている。
今朝、胸をよぎった悪い予感がさわさわと音を立てるのを聞いた気がした。
着信の時間を見ると、今から大体20分前。
かけ直すボタンを押そうとしたところで、電話が鳴った。
その名前も、仲原俊弥。
慌てて通話ボタンを押す。

「俊弥か?今かけ直そうとしてたところだ。何かあったのか!?」
自分の喉から出た声は、自分でも信じられないほど冷静さを欠いていた。