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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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34

「この時間だともう暗いけれど、東向きだから朝は日が差し込んでとっても明るいのよ」
そういえば、誠司さんのところの部屋も東向きだったのか朝はすごく明るかった。
「こんな立派な部屋、使って良いんですか?」
「立派・・・かしら?」
本当に首を傾げられた。
6畳くらいの部屋にベッドと机と箪笥。薄い水色で統一してあって電気をつけただけですごく明るい部屋に感じた。
誠司さんの家の部屋よりは確かに狭いけれど、それまでの生活に比べれば断然立派。
「こんな狭いところで悪いけど、もし荷物とか入りきらなかったら物置とかもあるから」
千晴さんが狭いって言った・・・荷物が入りきらないなんてそんなわけないのに。
「大丈夫です、十分すぎます。あ、わざわざ掃除してくださったんですよね、ありがとうございます」
朱音さんに向かってそう言った。
「いいのよ、あなたみたいな子が来てくれて嬉しいわ」
本当に嬉しそうに朱音さんがそういってくれた。
千晴さんも笑みを浮かべるのがみえた。
「空流くん、君とならうまくやっていけそうな気がする。よろしく」
改めて、千晴さんにそう言われた。
「はい、よろしくお願いします」

わずかしかない荷物を部屋に置いて、リビングへ戻る。
朱音さんがお茶を入れてもってきてくれた。
「実はね、テストだったんだよ、さっきの」
千晴さんの態度がさっきとは全然ちがかった。
すごく親しみやすい人な感じ。
「掃除をしてくれた朱音にちゃんと礼が言えるかどうか。気遣いが第一の仕事だからね」
「バイト希望の人が来るたびにこんな厳しいテストしてるからいつまでも人手が足りないのよ」
「俺が千春の印象を空流くんに植えつけたのもその一環だったりして」
俊弥さんまでそんなことを言った。
「気難しい人相手にできるかどうかも重要なんだよ。うちのお客様は気難しい方も多いから」
そっか・・・それで千晴さんは気難しい人のフリをしてたんだ。
「空流くんは見事にテスト合格。俊弥もありがと。」
「どういたしまして。空流くんのことよろしくな」
「ああ、任しとけ。でも悪いな、あんな部屋しか用意できなくて」
「いえ、本当に十分すぎます!」
「ありがとう、そういってくれると少し楽だよ」
・・・本当なのに。
「千晴も朱音さんもお坊ちゃんにお嬢様だからなあ。空流くん、この二人にあの部屋は一般家庭ではごく当たり前の部屋だって教えてあげなよ」
「え?・・・・うーん、でも、僕が前、母と住んでたところはアパートの一室だったんですけど6畳と4畳半の2部屋だけでした。お風呂とトイレとキッチンもありましたけど」
そういうと、なぜか沈黙が起こった。
「空流くん、千晴は超一流老舗旅館の次男なんだ。朱音さんはそこの常連さんのおうちのお嬢さん」
つまりは、二人ともすごいお金持ちってこと?
「二人とも部屋は誠司の別荘くらいの広さがあって当たり前だって思ってる」
ありえない・・・。
「そういうわけで、ここのペンションのお客さま用の部屋は普通に比べたら結構広いし、お客様もお金持ちであらせられるから」
うわあ・・・だからさっき気難しい方が多いって言ってたんだ。
・・・・大丈夫かなあ。
「心配しないで、最初のうちは私がちゃんとフォローに回るわ」
「ありがとうございます」
本当にありがたい。
「そういうわけで、ま、俺もたまに様子見に来るから。そろそろお暇させてもらうよ」
「え、もう帰るのか?」
「ああ、明日の午前中から面接があるんだ。寝ぼけ眼じゃ仕事にならないだろ。それに二人も仕事の説明とかいろいろあるだろうから俺はこの辺で」
「そうだな、またすぐに来いよ」
「多分ね」
「玄関まで送るな」
「あ、僕も」
そう言ってまた全員で席を立って、俊弥さんを見送った。

その後は、少しお茶を飲みながら話をした後に千晴さんにペンション全体の案内をしてもらった。
やっぱり客室は相当な広さがあった。
全部で3部屋あって、今日はたまたま誰もいないけれど、明日からお客様が来るらしい。

それから、3人で朱音さんの作った夕飯を食べた。
千晴さんは少しだけお酒を飲んでた。
朱音さんが作ってくれた料理は少し母さんの料理に似てるような味がした。

食後のお茶もいただいて、いろんな話をした。
そのほとんどは、一般中流家庭の生活がどんなものかを二人に説明する作業だったけれど。

時間も時間になると、手書きの仕事マニュアルを渡されて、部屋にひきとった。
部屋でマニュアルを読んでる途中にふと時計をみると、そろそろ誠司さんが家に帰ってくるだろう時間。

・・・あの手紙を読んでくれたかな。
黙って出てきちゃってごめんなさい・・・。

それでも、あなたに疎まれる恐怖に勝てなかったから。

自分勝手で臆病な僕を・・・

どうか、許してください・・・。