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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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34

「それじゃあ、行ってきます」
珍しく、誠司が休みの土曜日。

この日は、空流の編入試験の日。

私服で良いと事前にきいていたので、地味な私服を選んで電車に乗った。
道も一度確認してある。車で送っていこうかと申し出る誠司に、もし合格できたのなら毎日電車で通うことになるのだからと断った。

家の場所が場所であるから、学校へ通うには下りの電車を使うことになり、とても空いていた。席は沢山空いているけれども、落ち着いて座っている気分にはなれずに立ったまま英単語帳をみて時間を過ごす。

清藍学園は最寄の駅からは歩いて5分くらい。
しばらく歩いて校舎が見え始めたときから、ちょっと怖気づいた。
これって本当に学校?
学校といえば、校舎は白い薄汚れた壁でつくられていて横に長くて、てっぺんに時計がついている・・・そんなもんだとおもってた。それに、もともと通うはずだった公立高校もそんな感じだったからか、目の前にある学校は全く学校らしくなかった。
門の横には、お洒落な作りのホールみたいなものがある。
さらに門の中にはいると、見渡すほどの敷地。校舎と後者の間は中庭のように芝生になっていて、3階のあたりにはガラス張りの渡り廊下。
建物の一つ一つも白くてとてもきれいで、装飾が成されている。
中庭の全体に日があたっていて、とても気持ちよさそうだ。
こんなすごい学校だったのかと今更ながら驚きを隠せない。確かスポーツもすごいらしいときいたことあるから、この校舎の向こうにはきっと広大なグラウンドがあるんだろう。
しかし、それを確かめに言っている場合ではなく、門のすぐ横にある建物へ入った。
到着したら事務室へ声をかけてくださいといわれている。
学校はお休みの日だからか、窓口には年配の女性が一人だけだった。
「あの、編入試験を受けにきました寺山ですけど」
恐る恐る声をかけると対応してくれた事務員さんはにっこりと笑ってくれた。
「はい、こんにちは。聞いてますよ。ちょっと待ってね」
優しくそう言って、どこかへ内線をかけた。
すぐに電話は終って、担当の先生が迎えに来てくれるそう。
「頑張ってね」
元気付けるようにいってくれて、少し緊張が解けた。
しらばらくしてこちらへ歩いてきたのは、眼鏡をかけて温厚そうな背が高い中年の先生。
「お待たせ。僕は1年3組を担任で国語を担当している葉山です。ここまで迷わずに来られましたか?」
話しかけてくる声音も優しい。
「はい。駅からの道もわかりやすかったです」
「それならよかった。早速教室に行きましょう」
一番上の階まで階段を上がったところに1年生の教室が並んでた。
「この建物には3階に1年生の教室、2階に2年生の教室があるんだ。それで今日テストをするのはここの3階なんだけど教室じゃなくて音楽室。この建物の中でいちばん日当たりが良くて気持ちいいと思うよ。机も大きめだしね」
3階の一番奥へあるいていくと目的の音楽室。
扉を開けると、窓が2面あって、中庭側から陽射しがとてもよく差し込んできていた。
白い机が日の光を反射してとてもきれい。
「ここが今日の試験会場。どこでも落ち着く席に座って」
窓際の前から2番目の席に座った。
「それじゃあ、時間になるまで好きにしていていいからね。お手洗いは出てすぐに右のところにあるから。試験が始まるときにはその教科の担当の先生が来ます。1時間目は国語だから、国語を教えてる僕が1時間目の担当。2時間目は数学だから数学の担当が、同じように3時間目は英語だからね」
1時間ごとに先生が代わって回答の様子が見られてるのはちょっと緊張する。いちおう入試問題のレベルはやってきたけど、それ以上の難しい問題ばっかりでたらどうしよう。
「忘れ物とかあったら貸してあげるけど」
鞄の中から筆記用具を取り出して確認する。
「全部持ってます」
シャーペンと消しゴムはもちろん定規もコンパスもちゃんと持っていた。
「よかった。他になにか聞いておきたいこととかあるかな?なんでもいいよ」
本当に質問しても大丈夫そうな雰囲気だったからおそるおそる質問してみた。
「あの・・・今日の試験って、一人だけなんですか?」
編入試験っていわれたから、何人かいて編入できるのはそのなかの一人だけ、とかみたいなやつを想像してたけど・・。
「そうだね。寺山君だけ。だから合格するように頑張ってね」
元気付けてくれて、気合いを入れなおした。
1時間目が得意教科の国語でよかった。頑張ろう。
「それじゃあ僕は時間になったら戻ってくるから」
先生がいってしまうと、鞄の中から持ってきた参考書を取り出して最後の足掻きの勉強を始めた。

時間になる直前に先生が戻ってきて、参考書を鞄の中にしまった。
問題用紙と解答用紙が配られる。

「それじゃあ、始めて下さい」
その声と共に、テストを始めた。

問題文を読み始めると、意外と易しい問題が多い。
これなら、大丈夫かもしれない。
ミスをしないように鉛筆を進めて、解答していく。

テスト時間の50分間はあっという間に過ぎた。

「はい、そこまで」
最後の最後まで確認を続けて、顔をあげた。
「お疲れ様。それじゃあ、これはもらっていくね。次は10分後からだから、その時間にはここにいるようにしてね」
解答用紙を持って、先生が出て行った。

国語は、結構出来たかもしれない。