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夕日

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『真紅に綺麗な太陽のままに』




「あれ取ってきて」
この言葉が最近よく頭の中で回想されている。
最近あの時の夢を見てうなされてしまって、しっかりとした睡眠をとる事が出来ていないでいる。
今も例外ではなく、その夢にうなされてるわけなんだけど、こう何度も見ていると夢だという事が分かってしまう。
きっと私は後悔してるんだと思う、あの時あのセリフを言わなければ、彼は太陽になんて消えなかっただろうに…。
私は何であの時あのセリフを言ったんだろう…ただ誕生日前だったけれど…。
誕生日プレゼントに欲しかったわけじゃないんだけれど、あの時の綺麗な太陽は忘れられなくなってしまった。
もうそれだけでも十分なのに、彼は帰ってこなくなってしまった。
あの頃、彼の話を聞くのはそれなりに楽しかったから、聞けなくなるのは寂しいものがあった。
いや、今でも彼がいたらーなどと言う、実現する事の無い事を考えてしまう。
彼は仮にも死んでしまったのだから…。


アレから10年が経って私は高校、大学を卒業して、今は普通に働いている。
月に一回、彼の夢を見てうなされているのだけれど、何故か最近彼の夢を見るここ最近毎日…。
何かが起こる前触れなのか、私は少し気味が悪くて一昨日から寝ていない。
明日は私の誕生日、寝ておきたいけれど、寝たらまたあの夢を見て、うなされてしまいそうだから、寝る勇気が無い。
彼はきっと私を恨んでるんだろうなぁ…。
だから、夢に出てくるんだろうな…。
「ただいまー」
私はいつも通り仕事から帰ってきてカバンをソファーに置いて、ソファーに寝転がった。
今なら寝れる…けどあの夢を見たくない…早く…開放されたい…。
「おかーさん、今日の晩御飯は…」
私はおかーさんと話をする事にしたけど、数分して私は黙ってしまった。
と言うより、意識はもうなかった。
流石に起き続ける事に限界がきてたみたいだ。
私は寝てしまった。


「ねぇねぇ、持ってきたよ」
そう言ってとてもいい笑顔をして、彼は右手に持っている光っている赤い塊を見せてくる。
…いつもそうだ、何でだろう…なぜ彼の顔を思い出せないのだろう…
彼は昔のように笑った声なのだが、顔が見えない…霧みたいなのがかかっていて、彼の表情が見えない。
何でだろう、これはあの日の翌月からそうなのだ、彼の顔を思い出せない。
彼の手は大きかった、彼の背は頭の上にあごが乗る大きさだった、彼の声は低くて初めて聞く人は20代と間違えてしまっていた。
彼はなるべく笑うためにがんばっていた。
そんな彼をここまで覚えてる、他にもいろいろな事を覚えているのだけれど、どうしても、ここ10年ずっと表情だけを思い出せなくなってしまった。
「ごめんね、遅くなったみたいだね…君はそんなに大人びて…ごめん…」
彼はとても、申し訳なさそうに言葉を紡いでいた。
私は何度も叫んだけれど、いつだって彼に何度だって叫んだけれど、この声が一度も声になった事がない。
私は、彼が話してる声を聞いて、私は口をパクパクさせて、時に泣いてしまった。
私は声が出せないけれど、いつだって彼は私の行動に一々反応する…。
私が泣けば、心配してくれたし、私が怒れば、宥めてくれたし、詰まらなそうにしていれば、楽しませようとしてくれたし…。
いつだって彼は夢に現れた時、私の事を心配してくれた。
彼がまだ私と言葉を交わせていた頃、私は「妹だ…いや、誕生日的に姉か…?」と言われてた…。
だから、彼は私を姉妹の様に扱ってくれたのかもしれない…。
私は一人っ子だからちょっと憧れてた兄弟と言う存在…私は正直ちょっと嬉しかったけど、なんか時々悪い気がしてならなかった。
彼にはいっぱいお世話になってたけど、私自身あまり何かしてあげた感じはあまりしてない。
もっともっと何かした方が良かったのか、そう考えることも時々あるけれど、彼と話してる事が一番なのかな…と思って時々しか出来ていなかった。
彼はいつだって「遠慮は要らない」とか「任せなさい」とか言っていたから、ついつい頼ってしまった事もある。
私は弱いのかな?それとも、彼が強いのかな?今でも…いや、今だからこそ私は分からない。
「ん?嬉しくないの?折角持ってきてやったのに」
彼はあの時のように、冗談を言いながら笑って、私に話しかける。
最近ずっと聞いてるから懐かしいとは思わなくなったけど、月に1回聞いてた時は懐かしいって思ってた。
でも、久しぶりに言葉を交わしたいな…。
「…−−…ゴメンな、もう少し、もう少しで戻るから」
私を安心させるような優しい声は、正直私は信じられなかった。
夢とは残酷な物、自分の都合の良い様に持っていこうとしてしまう。
やっぱり私は弱いのかな…さて、こんな現実逃避してる夢なんてみてる場合じゃない、起きて晩御飯を食べないと。


私は、晩御飯を食べた後、明日の事を考えながらテレビをチャンネルをころころ変えながら見ていた。
今じゃもう地デジ、チャンネルが多い割りにあまり固定してみる物は最近無くなってしまった。
と言うより、ちょっと前までは見たいチャンネルが多すぎて、嫌になって半ばテレビが嫌いになってしまっている。
だから、ころころ変えながらテレビを眺めてることになる、昔よくお父さんがやっててちょっと迷惑だなーって思ってた事だけど、なんか今なら分かる気がする。
「先ほど入りました、速報ですが、どうやらアメリカに隕石と思われる物が落ちたそうです。
 隕石により、出来た穴がこちらです」
そう言って綺麗にボールが凹ませた様に丸く大地がえぐられてる映像が流される。
隕石くらいでニュースになる事なんて少ないのに、何でまた隕石でニュースになったんだろう…?
…どうやら、このニュースキャスターの言う話によると、穴の中心から外に向かって足跡があるという事らしい。
近くにいた人が真先に隕石のところに行く途中、何か少年の影を見たと言っているが、気が動転して幻覚を見たと言われている。
なんだかこの人不憫だなぁ…。
誰か、この人以外が、真先に来て、足跡をつけたんだと言っている人も居るけれどみたいだけど、そうするとすごいミステリーになる事にまだ気付いていないらしい。
宇宙人を信じてる人たちの中では宇宙人を見たんだとも言われているみたいだけど、なんかホント不憫に思える。
少年…か…なんかやっぱり、少年って聞くと夢で見るあの頃のままの彼を思い浮かべてしまう…。
「…−−…ゴメンな、もう少し、もう少しで戻るから」
何故か夢の中で彼が最後に残したセリフが頭の中で再生されていた。
まさか・・・ね。


「う…きつい…やっぱり、無理に飲まされたのが不味かったのかな…」
翌日私は、昔の仲間とかが私の誕生日会を開いてくれて、夜遅くまで飲んでしまった。
私は車があるから本気で遠慮したのだが、運転してくれると言うので、たまにはいいかと飲んだのに、言った本人すら飲んで泥酔してしまった。
だから、今友達に来てもらって、しかもわざわざ二人、私の車で家まで送ってもらってる途中。
「珍しいな、まさか車あるのに飲むなんて」
「車あるから飲まないって言ったんだよ?ちゃんと」
そんな会話をしつつ、車の後部座席で寝たり座ったりを繰り返している。
作品名:夕日 作家名:異海 豹