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大人のための異文童話集2

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第19話 マッチ売りの少女


寒いのはイヤだからと、
暖かさを求めてさまよい歩いた。

ときには学校、ときには教会。
歩き疲れてこころも冷える。

ほんの少しの暖かさにこころが揺れて、
とどまる場所と身を置いた。

けれどもそれは幻想の世界。
気付いてみれば寒さは防げずまた歩く。

少しの暖かさでいいと繰り返すうち、温もりなんて夢だと思う。

結局冷えたその身の置き場。
幻想であろうとなかろうと、そこしかないと諦めた時・・・
マッチが現われ火を灯す。

1本、また1本とマッチをこすり、
灯すその火の暖かさ。
いつしか少女は寒さを忘れてしまい、暖かさに安堵を憶える。



そして少女は恋をした。

ほのかな温もりしか持てないマッチに・・・恋をした。
温かなマッチの火がとても好きだった。

少女はマッチを火をつける。

マッチの数、その限りがあることにも気付かずに、
こころが寒くなるとマッチに火をつけた。

あるとき、ふと、少女は気付いた。

残り少ないマッチの数に。
使えばなくなるマッチの数に。

1本、火を灯せばマッチはなくなり、
また1本・・・
火を灯せばその身の置き場が遠ざかる。

それでも少女はマッチに火を灯す。
少ないマッチ数えると、もう、涙あふれて止まらない。

もうすぐで、愛しいマッチともお別れです。

箱の中には最後のマッチ。
これで・・・
寂しいこの、身体と心ともお別れです。

雪の中、少女はマッチと共に夢の中へと旅立つのです。