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Pure Love ~君しか見えない~

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『……僕は聴覚を失って、たくさんの差別を受けてきたよ。でも僕には君みたいな友達が、ずっと隣にいてくれた。手話を覚えてくれた。いじめっ子から庇ってくれた。それだけで、僕は強くなれたんだ。だから、君が僕から離れていっても、僕は悲しくなんてなかったんだ……だってそれは、君から外の世界に向けられる、新しい一歩になったんだから……だから僕は、君にお礼こそ言っても、責めたくなんかないよ』
 和人の心が、ストレートに幸に伝わる。とてつもなく大きな心を持つような和人の優しさが、幸の心を溶かしていく気がした。幸の瞳から、大粒の涙が伝う。
「ごめんね、和人……今までずっと、ごめんね……」
 そう言う幸に、和人は静かに首を振った。
『もう自分を責めないで……僕は大丈夫だよ。新しい友達もいるし、こうしてまた君と話すことが出来たんだから』
「うん。うん……」
 尚も泣いている幸の肩を、和人がそっと叩いた。それは、和人が子供の頃から見せていたコミュニケーションの一つだ。
『じゃあ僕、もう行くよ』
 和人が、立ち上がって言った。
「あ、うん……」
 幸が返事をした時には、和人はすでに玄関で靴を履いている。履き終わると、和人は思い出したように振り向いて、幸に笑いかけた。
『婚約したんだってね。おめでとう』
「う、うん。ありがとう……」
 未だ涙目の幸が、素直に答える。
『じゃあ、おやすみなさい』
「うん、ありがとう。気を付けて……」
 言葉少なく、和人はそのまま幸の部屋を後にした。
 幸はうまく言葉を交わせなかったことに落ち込むものの、長年凍りついた二人の溝が静かに埋まっていくのを感じた。