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七変化遁走曲

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4.染まりの色


 翌日の昼休み、約束通り携帯電話に着信があって、あたしは慌てて校舎の陰で電話を折り返した。受話口に出たのは勿論常葉だ。簡単に用件だけ聞いて、放課後に待ち合わせることで決定した。
 電話に出て、ちょっと溜息。あたしは昼間は学校なので、昨日の酒壷は常葉が一人で陽花さんに届けに行っていた。ちなみに伯烏庵の主人は太っ腹な人で、遅めの再開祝いだから御代は不必要とのことで、恐縮しながらもお言葉に甘えた。活動費はまだまだ立ち行かないので正直助かった。

「うん。じゃあ、後は頼んだわね」
『最善を尽くすよ。翠仙は勉強頑張ってね』
「うるさいわよ」

 軽口を叩いて終話ボタンを押す。
 顔なんて見えもしないのに、受話口の向こうにある涼しげな笑顔が脳裏に浮かんだ。
 見上げた空は、入梅のはずなのに清々しい快晴。もしかしたら今年は夏が近いのかしらと思いながらもその傍ら、なんだか狐の表情と通じるものがあるような気がして、余計にイライラした。


 常葉が指定してきたのは何故か近所のファミリーレストランだった。一体どうしてと首を傾げながら店内を見渡したのに、店内に見知った顔は見当たらなかった。仕方なく窓際に席を取って、クリーム餡蜜など注文しながら相手を待つ。
 常葉より餡蜜を待ち侘びていると、期待に反して狐のほうが先に顔を見せた。席について僅か五分。それなのに彼は申し訳なさそうな顔で頭を下げる。

「ごめん、遅くなった。ちょっと調べ物が追いつかなくて」
「大丈夫。そんなに待ってないから」
 これは本当だったので素直に首を振る。
「それで、これからどうするの?」
 席に着くのを待って、とりあえずはこれからの予定を聞く。外で待ち合わせたのは、その方が時間を短縮出来るからだ。そして今後のことを急ぐのは、やはり陽花さんの依頼に関係している。

 白い酒壷を持って行ったのだから、解決したんじゃないのかって?残念ながら。
 やっと餡密が到着したところで、ここからは事の顛末を常葉に説明してもらうことにしよう。

作品名:七変化遁走曲 作家名:篠宮あさと