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大人のための異文童話集1

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それから二日経ってのことでした。
あかずきんちゃんが寂しい思いを抱いたまま、じっとおばあちゃんの家で待っていると、帰らぬあかずきんちゃんを心配したらしく、お父さんがやってきました。

外は雪が降り積もりとても寒い季節です。
やって来たお父さんの手には、 あかずきんちゃんが温まるようにと、しっかりと煮込まれた温かい鍋がありました。

お父さんは、寒さに震えているあかずきんちゃんを見て言いました。
「あかずきん、お前が戻らないからとても心配したんだぞ。」
「お前はいつまでもこんなところで、いったいどうしていたんだ。」
「まあいい。」
「今夜も寒い。いまはここでこの鍋でも食べて、明日家に戻ることにしよう。」

お父さんはそう言いながら、夕食の支度を整えました。
あかずきんちゃんは、お父さんと一緒にその鍋を食べて、狼のことは忘れることにしました。
そしてあかずきんちゃんが、その鍋の中のお肉を口にした時です。
何故かはわかりませんが、とても懐かしい思いが心に浮かんできたのでした。

ひとりで始めて、このおばあちゃんの家にやって来たときのこと。
人喰い狼らしいおばあちゃんが、とても優しく抱き締めてくれたこと。
そんなおばあちゃんに逢いたくて、逢いたくて、お父さんにどんなウソをつこうかと考えたこと。
逢えなくなるなら一層のこと…。そう思って家から出掛けたこと。
そして、おばあちゃんに化けていた狼さんが、真剣に自分を愛していてくれていたこと。

そんないろいろなことを思い浮かべているうち、あかずきんちゃんの瞳からは、自然に涙がこぼれ落ちて来たのでした。
そしてどこからか、こんな声が聞こえたような気がしました。

「あかずきんや、私はお前を食べるより、お前の血に肉になれた方が嬉しいんだよ。」
「だってそうだろう…」
「これでお前との約束した通り、私はいつまでもお前と一緒にいられるのだから…」と。