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大人のための異文童話集1

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ボクはボクを作ってくれて、いつもいろいろと心配してくれて、とっても優しくしてくれた、ゼペットおじいさんが大好きだった。
それなのにボクは、おじいさんに何もしてあげられないままで、おじいさんは死んじゃった。

ボクは、いつでもそっと見守ってくれて、ボクが人間として進む道を教えてくれて、こんなボクを人間にしてくれた、ジミニィや女神様が大好きだった。

それなのにボクが人間になると、ジミニィも女神様も姿も見せてくれなくなった。
こんなに好きなのに、おじいさんもジミニィも女神様もいなくなった。

ボクは人間のことをいろいろと考えるけど、いつもひとりぼっちで、愛というものをどうすればいいのか解らない。


暗く深い空を見上げては少年はそう言って、その幼い頬を涙に染めてそっと手を合わせ、小さく弱く輝くあの星に、一生懸命に願っていたのです。

女神様、もう一度ボクのところに現れてよ。

もう…、死んじゃったおじいさんを返してなんて言わないから。
ほら…、ボクの鼻、もう伸びることなんてないよ。
ボクはもう、ちゃんと人間になってるんだ…、でも苦しいよ。

人間ってどうしてこんなに身勝手なの? わがままなの? そして優しくなろうとするの?
ボクには全然解らないよ。

女神様、ボクは今でもキミのことが大好きなんだ。
ボクの傍に来て、ボクに愛というものを教えてよ。

そんな苦悩に満ちた少年を哀れに思ったのか、それまで小さく輝いていた星は、一瞬強い煌きを放ったのでした。

するとどうでしょう。
少年のカラダは見る見る間に、木のカラダへと変っていったのです。

「ピノッキオ、ごめんなさいね。」
「あなたを人間にするには、まだ早かったようです。」
「もう少し…、私はあなたの傍にいて、あなたに愛を教えてあげましょう。」
「あなが神様の望むような、慈愛に溢れた立派な大人の人間となれるように…。」

そのような声が聞こえて来ると、強く煌めいた星は女神様に姿を変えて、ピノッキオの傍えと舞い降りて来たのでした。