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Gothic Clover #02

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 月曜日、昼休みに人飼が「面白いモノ」を持って来た。

「フォーク?」

 血がついている。

「うん。現場に落ちてたの」
「こんなのいつ手に入れたんだ?」
「夜中に現場に行ってみたら見つけたの。多分、回収し忘れたのね」

 またこいつは……呆れてくる。
 どうしてコイツはわざわざ自分から面倒事に首を突っ込もうとするんだ?

「なんで言ってくれなかったんだよぉぉぉぉぉ」

 掻太は自分を誘ってくれなかったコトが残念なのか、そのまま机の上に倒れ込んだ。いちいちリアクションが過ぎる奴である。

「それでね、見てよ、ココ」

 人飼はフォークの柄の部分を指差した。

「……マーチ・ヘア?」

 そこには「March hair」とロゴが入っていた。

「マーチ・ヘアってアノ喫茶店?」
「そうね」

 人飼は自慢気に答えた。
 「March hair」か。確かこの学校の近くにある喫茶店の名前だよな。

「じゃあ犯人は……」

 掻太が身を乗り出して言う。

「『March hair』の従業員ね。」
「いや、わからないヨ」

 ボクは応えた。

「もしかしたら犯人はカモフラージュのためにわざわざそのフォークを使ったのかもしれないヨ。そんな少ない情報でモノゴトを確定しちゃ駄目ダヨ」
「そうか……」

 全く……能無し共め。
 ボクはハンバーグを口に放り込んだ。人飼はカロリーメイト(フルーツ味)を食べている。そういえば人飼はクラスの女子と昼食を食べないのだろうか? いや、ボクは人飼が他の女子と話しているトコロすら見たコトが無い。
 ボクは聞いてみた。

「人飼は他の女子とは仲いいノ?」
「え?」
「なんか、ボク達とばかり話しているケド」
「んー、一応話したりはしているけど、なんて言うか、合わないのよね」
「合わナイ?」
「うん。性格というか、感性というか……」

 わかるような気がする。
 人飼は他人とは何かが違う。
 何が違うかは詳しくは言えないが。
 まぁ、違うコトに変わりはナイ。

「あ、忘れてた」

 掻太が何かを思い出して自分の鞄の中を掻き回し始めた。
 取り出したのは1冊の週刊誌だ。

「コレコレ」

 掻太はそう言いながらボク達にその週刊誌を見せた。
 表紙には「山舵町で蘇る悪夢。犯人は死体を貪る食人鬼!!」などとまぁ、またもやセンスもひったくれもない破滅的なネーミングセンス(これをセンスと呼べるのだろうか?)が存在していた。
 ページを(人飼の前なのでグラビアのページをめくらないように注意しながら)めくって目的の記事を捜し出した。記事の中央にはデカデカと屍体の写真が載せてあり、それについて文章が掲載されている。やはり、今わかっている被害者の数は4人に変わりはないらしい。

「こんな写真、いいのかな?」

 人飼が呟いた。
 確かに、写真の中の屍体は見れば見るほどグロい。
 しかし、こんなのは人の形をしたただの肉塊だ。
 それを見て気持ち悪くなるのは身勝手だと思う。
 スーパーで売られている豚肉を見て「気持ち悪い」と思うか?
 ……とはいえ、常識的ではないことぐらいは、流石にボクだって弁えてるけど。

「ココ読めよ、ココ」

 掻太に急かされてボクは記事に目を向けた。
 そこには地図があり、今回の事件の被害者の屍体がドコにあったのかがわかるようになっている。

「その地図見ながら現場周らねぇ?」
「いいね、掻太」

 そこでボクはふと、思った。
 現場を回ってボク達はどうする気だろう?
 犯人捜しでもするのだろうか?
 いや、この疑問に対する解答はもう出ている。
 多分、ボク達は人飼に振り回されているダケなのだ。
 殺人鬼マニアの人飼に。
 じゃあ、何故ボク達は人飼に振り回されているのだ?
 ……そう言えばなんでだ?
 …………ま、考えてもわからないモノは一時的に置いておくに限る。
 「逃げる」とも言う。
 チャイムが鳴る。
 その後にボク達は先生が来たので席に着いた。地理の授業だ。そこでボクは急に眠気に襲われた。地理なんて、日本国内だけ覚えていればそれで十分だ。別に外国の地名なんて覚えてもなんの役にも立たない。ボクは自分自身にそう言い訳して睡眠を開始した。
 もちろん怒られた。

++++++++++

 ボクは家で新聞を見ていた。なるほど、事件の現場は山舵市内に集中している。人飼の好奇心が疼くワケだ。
 ボクはナイフで新聞の切り抜きを始める。
 しかし、2週間で4人か。結構な数だ。
 つまり犯人は1週間に2人は人肉を喰らっているのである。

「フン……」

 ボクは記事を放り投げた。

「下らなイ」

 口に出して言ってみた。
 言ってみたダケだった。
 ボクは思考する。
 何故ボクはこんな下らないコトに巻き込まれているんだろう。ボクは過去に何度も考えていたコトをまた考え始める。
 ボクがここまで他人事に首を突っ込もうとするのは前例がない。こんな下らない状況、本来のボクならとっくに抜け出している。でもボクは関係者であり続けている。
 わからない。
 眠気が襲ってくる。
 ボクは今まで見た屍体を思い出していた。
 恵之岸 人使(えのぎし ひとし)
 噛神 愛太 (かみがみ まなた)
 恐神 貞子 (きょうがみ さだこ)
 刺鋼 針 (さしがね しん)

 そして、倒鐘 罰浩……

 そうか、ボクは彼を殺した犯人を……
 ボクはそんなコトを考えながら眠りについた。

作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる