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Gothic Clover #02

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「……違うヨ。罰浩のコトを思い出していたんダ」
「ああ、あいつか。」

 倒鐘罰浩(とうがねばつはる)
 かつて「ボク達」の一員であり、ボクと掻太の友達だった人間。
 線の細い顔が印象的だった。
 誰よりも人間らしい心を持った人間だった。
 うれしい時に笑い、
 かなしい時に悲しみ、
 むかつく時に怒り、
 泣きたい時に泣くことができる人間だった。
 あいつは純粋だった。
 もしかしたら人飼と同じぐらい純粋だったかもしれない。

 あいつは死んだ。

 バラバラにされて死んだ。
 バラバラに
 バラバラに
 顔も
 手も
 足も
 胴体も
 内臓も
 脳髄も
 全て残らず
 バラバラにされて死んだ。
 中3の冬。
 雪が降っていたような気がする。
 動機不明。
 今だに見つからない犯人。
 解けなかった謎。
 無くなった心臓。
赤赤赤黒赤死死死屍死流れる血流れる血流れる血充満する腐敗臭流れる血驚愕驚愕驚愕不確定な確信驚愕
 「死」という美しさ。 

 彼はバラバラにされて死んだ。
 バラバラにされていないのはあの線の細い顔だけだったかもしれない。

「あいつ、天国で元気にしてるかな?」
「天国なんてあるかどうかもわからないケドネ」
「ハッ。ニヒリストめ」
「何ヲ今更」

 本当に、
 何を、
 今更。

 予鈴が鳴る。

「あー、授業だ。かったるい」
「次ナニ?」
「数学」

 ……無意味だってば

++++++++++

 山舵第3公園
 ボクは缶のコーラを飲んでいた。
 炭酸系はあまり好きではないが、(時々お腹を壊すので)こう暑いと飲みたくなってしまう。
 人飼は紙パックのレモンティーを飲んでいる。
 ストローを咥える姿が結構カワイイ。

「ではー、ただいまより、殺人事件マニアの会、遠足当日会議を始めーます」

 掻太のネーミングセンス悪さに場の空気が白けていくのが目に見える。でも、確かにボク達は殺人事件マニアかもしれない。
 つーか、会議をするならマックでもいいダロ?
 わざわざ公園でやらなくても……。

「……やっぱ、マックでやった方が良かったかな?」

 やっと気付いたか。

「でもしょうがないか」

 何故に?

「ココ現場だもんな」

 あ、なるほど。
 だからあの黄色いテープはあるのか。

「この会議の主題は『いかにしてあの警備員の目をかいくぐるか』です。」

 見れば、黄色いテープの前には警備員達が現場の検査をしていた。他にも刑事らしき人がチラホラいる。
 うわっ、いま目が合った。怖ぇ。
 こっち見るなよ。

「で、どーすんの?」

 人飼がストローを咥えながら質問した。

「フフフ、いい考えがある」

 掻太は自信満々に答えた。
 さて、ココでボクの方からあらかじめ言っておくコトがある。
 桐馘掻太はベタ好きだ。
 いや、ベタなのが好きと言うか、存在自体がベタなのだ。
 何かとキメゼリフを言うし、風呂の後には必ず牛乳を飲む。
 理科の実験をすれば必ず爆発を起こすし(わざと)、体育の授業中に友が倒れれば(ボクのコトだが)怒りのあまり攻撃力が増す。(「クリリンのことかー!」と叫びながら。誰が鼻無しだ。)まぁ、あの時は貧血で倒れたダケだケド。
 そんなベタでベタ好きの掻太が考えるコトだ。どうせベタな考えに決まってル。

「で、どんな考えナノ?」

 ボクは一応聞いてみる。

「囮作戦だ。」

 案の定ベタだった。

「と、いうワケで捩斬行ってこい」
「……」

 どうやら囮役はボクらしい。
 ボクはしぶしぶと警備員の目の前に出て行った。

++++++++++

 ボク達はひたすら謝っていた。

「ゴメンナサイ、本当にゴメンナサイ。ちょっとした興味本位だったんデス。いや、違いマス。屍体をちょっとダケ見たいな〜ってな感じで……いや、学校は勘弁してクダサイ。本当に勘弁してクダサイ。教師はピーマンの次に嫌いなんデス。いや、ふざけて無いデス。……本当にゴメンナサイ」

 囮作戦なんてベタな作戦が最近の警備員に通用するハズも無く、ボク達はすぐに捕まった。
 簡単な注意を受け、やっとボク達は解放される。

「あー、やっぱ駄目かぁ」
「そりゃ駄目ダロ」
「行けると思ったのになぁ。ねぇ、人飼?」
「……ベタ夫め」
「ぐふぉう」

 掻太はその場で倒れた。
 実は気にしていたらしい。
 つーか、気付いてるならサッサと直せよ。

「ベタ夫、早く行くヨ」
「ベタ夫、早く立ちなさい」
「五月蠅いっ!ベタ夫って言うな!!」
「文句を言うナ、ベタ夫」
「だらしないわよ、ベタ夫」
「確定かよ」
「ったく、ヒヤヒヤしたんだからナ」
「でも、この作戦が失敗したのはお前のせいでもあるぞ? 捩斬」
「ア゛?」
「お前がもう少し目立つ行動をすれば警備員の目はお前の方に釘付けだったんだ」

 確かに、ボクが行った行動は「いきなりロボットダンスを踊る」という、全く意味不明の行動だった。結構いけると思ったんだけどなぁ、あれ。
 何気に得意なんだぞ、ロボットダンス。関節の動きを極めるのに長い年月がかかったものだ。

「いっそ脱げば良かったのよ」
「ああ、それいいな! 今からでも遅くないぞ捩斬、行ってこい!」
「……勘弁してクレヨ」

 ボクは呟いた。
 その後に、ボク達は別れの挨拶もせずにそれぞれの帰路についた。

作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる