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Gothic Clover #01

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 人飼が行方不明になった。
 つまり、犯人に誘拐されたというコトだ。
 やはり、眼球をえぐり取られるのだろうか。
 あの黒い眼球を。
 ふざけるな。
 あの目はボクが先に目をつけたんだ。
 誰にも渡すもんか。
 ……。
 ボクはさっきから何を考えているんだ?

「クソ食らえ……」

 ボクは呟いた。
 10時26分、ボクは屋上にいた。
 こんな時間に屋上にいるなんて、健全な高校生活を送る人間がする事じゃない。
 早くも一年で不良決定かな?
 でも、授業なんて受けている場合じゃない。
 これからどうする?
 昨日見た、あのケチャップ。
 あれのおかげでボクの中で一つの仮説が成り立っていた。欲しいのはその仮説を定義する証拠だ。

「捩斬!」

 掻太が来た。

「やっぱりここかよ」
「なんだ、キミまで不良の仲間入りカ?」
「お前、授業サボってまでどうするつもりだよ!」
「どうするっテ?決まっているダロウ」

 そんなものとっくのとうに決っている。

「人飼を助けるノサ」
「本気かよ……」

 嘘でこんな事言わないよ。

++++++++++

 チャイムが鳴る。
 時間は12時20分。
 ボクと掻太はずっと事件について話していた。
 だいたい話はまとまった。ボクの仮説は今のトコロは否定されていない。肯定もされていないケド。
 学校の方は屍体が校内で見つかった上に、また一人生徒が行方不明になった以上、今日は午前授業、明日からはしばらく休校だそうだ。
 その事実はボクにとって好都合だ。行動が起こしやすい。

「さ、行こうカ」

 ボクは立ち上がった。

「捩斬・・・」
「何?」
「もし、お前の言う通りだとしたら、それ、犯人相当イってない?」
「だってあんなトコロにケチャップだヨ? 前に人飼と行った時に見つけたキャップもあるしサ」
「だからってこれはないだろう。お前の仮説が当たっているとしたら、その犯人、もう人間じゃないよ」
「キミは平気で人を殺すヤツを人間だと思っているのかい?」
「……」
「さぁ、早く現場に行こうヨ。じゃないとギャラリーが集まってしまウ」
「……わかったよ」

 屋上を後にするボク達二人。
 さて、固めていこうか。

++++++++++

 ボク達は現場の前で立往生していた。
 現場はココから5メートルぐらい。目と鼻の先だ。でも近付けない。その理由が今、目の前にいる。
 教師だ。あとプラスで警察。
 現場付近を見張っている。
 よく考えたら当たり前のコトだ。
 事件の現場に生徒を入れるワケにはいかないよな。

「どうする? 捩斬」
「どうするって、諦めるしかないヨ」
「そうだよなぁ……」

 渋々撤退。

「クソッ。何も出来ないじゃん」

 掻太は廊下を歩きながら愚痴った。

「大丈夫ダヨ。ボクが調べたいコトは別に現場に行かなくても解るし」

 ボクの仮説は犯行の方法についてであって、犯人はまだわからないのだ。でも、だいたいの目星はついているけど。
 ボクは立ち止まって事務室のドアをノックした。

「捩斬?」
「静かにしてテ」
「はいは〜い」

 30代ぐらいの女性が出て来た。

「すいません、英検の申込み用紙欲しいんですケド。ほラ、例の事件でゴタゴタしてるでしょウ? だから申し込み用紙だけデモ先に欲しくテ」
「英検ね。ちょっと待ってて」
「捩斬?」
「いいから左の表覚えてて」

 事務室の左にはどの教師が何時まで学校にいたかが、一昨日まで記録されている表がある。
 ちなみに英検を受ける気などサラサラない。

「なるほどね」

 掻太は理解出来たらしく、その表の記憶を始めた。

「はい、じゃあコレ明後日までに出してね」
「わかりまシタ」

 ボク達は事務室を後にする。

「で、一番最後まで残っていた教師ハ?」
「貴棚滝太(たかたな たきた)だって」
「あア、タッキーね」

 貴棚滝太、通称タッキー。
 ちなみに50代のおじさんだ。
 技術の教師であり、技術工作部(主にガンプラを作っている。)の顧問である。前に掻太に付き合って嫌々見学したこともあったが、技術工作部と言うよりも、ガンオタの巣窟という名称の方があっているような状態だった。漫研でもないのにガンダムの同人誌を書いているのはウチの学校の技術工作部だけだろう。(ちなみにこの事実をタッキーは知らない。)

「で、どうする?」
「技術室に行ク」

 掻太はやれやれといった感じで溜め息をついた。

++++++++++

 技術準備室はシンナーの匂いで溢れていた。

「さーて荒らしますか」

 掻太、なんでそんなに張り切ってるんだ?
 ボクは無言で机を調べる。
 特に何もない。
 ハズレか?

「捩斬、誰か来る!」

 掻太が言い終わる前にドアが開いた。
 そこにいたのは瀬水傍嶺、あの家庭科の教師だった。

「君達、ここで何をしているんだ?」

 コイツが瀬水傍嶺。
 一見普通の教師だ。

「え〜っと、貴棚先生に宿題のプリント出そうと思っテ・・・」

 ボクは咄嗟に答えた。

「下校時刻はとっくに過ぎている。早く帰りなさい。」

 もしかしたらいい機会かもしれない。
 ボクは聞いてみるコトにした。

「行方不明だなんて怖いですネ」
「ん? ああ、1年の人飼……だっけ?確かに怖いな」

 掻太が何か言いたそうだが放って置く。

「眼球が無い状態で見つかるんでしょう?」
「らしいね」
「……犯人は眼球をどうするつもりでしょうね?」

 反応を見る。

「さぁね。犯罪者の気持ちなんてわからないよ」

 予想通りの応え方だった。
 ま、こんなもんだよな、普通。

「現場では調味料なんかも見つかっているそうですよ。」
「そうだね。マヨネーズやらケチャップやら何やら、一体何に使うんだろうね」

 ……確かに、それは誰にもわかっていない。

「そんな事より早く帰りなさい。宿題は休校明けでいいから」
「はい、わかりましタ」
「後、貴棚先生知らない?」
「? どうされたのですカ?」
「いや、つまらない事なんだが、家庭科室の調味料のキャップが無いものが多くてね。多分、生徒のせいだと思うのだが・・・。たしかここにはキャップとかそういう部品があるはずだから、できたら分けて欲しいと思ったんだけど」

 なるほど。技術室にはそういう小さい部品が無駄に沢山ある。
 サイズ規格のよくわからないネジとか、コードとか、ペットボトルのキャップとか。
 瀬水先生もそれが目的で来たのだろう。
 しかし残念ながら、僕達はタッキーがどこにいるかは知らない。

「さぁ? 知りませんケド」
「……そういえば君達も貴棚先生を探していたんだっけ? 知っているはずないか。悪いね、さ、早く帰りなさい」
「ええ、さようなラ」

 ボク達は瀬水傍嶺に別れを告げると技術準備室を後にした。
 収穫は、あった。
 もういい満足だ。

「捩斬? お前……」
「掻太、瀬水傍嶺は最後から何番目に学校を出たんだい?」
「二番目ぐらいだったと思うけど。」
「……掻太、今夜空いてるカイ?」
「空いてるけど…………何をするつもり?」

 決まっているだろう。

「答え合わせだヨ」

 ハッ
作品名:Gothic Clover #01 作家名:きせる