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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン3-逆襲の紅き煌帝-

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第4章 そして未来へ(6)


 今度は大地だけではなかった。
 どこからか舞ってきた花びらが一瞬にして枯れた。
 近づくことはできない。
 〈黒の剣〉に近づけば喰われてしまう。
 屍体が干からびて一気に骨になり、さらに砂となって舞い散る。
 まるで早送りの映像を見ているようだ。
 世界が砂と化していく。
 アダムは空を見上げた。その視線の先にいるのはセレンだ。いや、セレンを見ているのではない〈生命の実〉を見ているのだ。
 もはや〈黒の剣〉に対抗できるのは〈生命の実〉を備えた錫杖しかない。
 セレンの背中で4枚のサファイア色の翼が美しく輝いた。
「やめてくださいというのがわからないんですか!」
 降下した勢いのまま錫杖がアダムに振るわれた。
 〈黒の剣〉が薙がれ、錫杖ごとセレンの躰を大きく後方に飛ばした。
「人間が武器を捨て降伏しない限り戦いは終わらない。まずは御前が〈生命の実〉を捨てるのだ」
「できません。わたしがこれを捨てても、あなたが武器を捨てないからです。それでは戦いは終わりません」
「なら私を倒すか? 何故、私を倒そうとするのだ? 武力を持って武力を制すのが御前のやり方か? 私と同じ方法を取る御前に私の事をとやかく言う資格があるのか? 御前の望みは何だ?」
 まくし立てるようにいくつもの問いを投げかけた。
 セレンは押し黙ってしまった。
 シスター・セレンの望みは平和だ。戦いなどしたくない。見たくもない。けれど、それを終わらせるための手段――その葛藤。錫杖を握る手は常に震えていた。
 アダムはセレンを見透かしていた。
「平和の為に戦うと言うのは矛盾していると思わないか? 平和主義を謳うのならば、武器を持った者が目の前に現れても、丸腰で無抵抗に殺されるべきではないか? 例え、家族や愛する者が殺されようと、其れをただ見ている事が平和なのだろうか?」
 どこか言葉に違和感がある。
 もしかしたら、アダムも揺れているのでないだろうか――矛盾の中で。
「私は悪か? 御前は善か? それとも逆か? 此の世は勧善懲悪か? 私は反逆者なのだろうか? 神とは何だ? ルールは誰が決めるのだ?」
 アダムは枯れた世界を見渡した。
「此が私の望む世界なのか……ククククッ……そうだ、我が望みは破壊と混沌!」
 邪悪に笑ったアダムはセレンに斬りかかった。
 もともとセレンは戦闘などできない。
 もつれた足を地面に引っかけセレンは尻餅をついてしまった。その状態でなんとか錫杖の柄を突き出して〈黒の剣〉を受け止めた。
「く……くぅ……っ!」
 必死に歯を食いしばるセレンだが、じわじわを押されている。錫杖の柄を〈黒の剣〉の刃が眼と鼻の先まで迫っている。
 なんということだセレンの髪の毛の色が薄くなっていく。
 〈黒の剣〉が〈生命の実〉を優るというのか!?
 突然、頭を振り乱してアダムが後退った。
「ぐおおおおっ……違うっ……私の望みは……」
 腕が大きく振り払われ〈黒の剣〉が放った衝撃波が大地を抉って吹き飛ばした。
「きゃっ!」
 錫杖でガードしながらセレンも上空に吹き飛ばされた。
 アダムは〈黒の剣〉を大地に突き立て片膝をついた。
「己ぇッ……〈黒の剣〉の仕業か……此奴も生きている……歴代の主の欲望や呪いまで吸い取っていた云うのか……其れが私の意識まで支配しようと……」
 武器が使用者の精神まで支配するというのか?
 禍々しく〈黒の剣〉が唸っている。
 創られたそのときから、〈黒の剣〉はこのように唸っていたのか?
 血塗られた大剣。呪われた大剣。シュラ帝國の象徴である大剣。
 帝國に伝わる以前は、どのような持ち主が使っていたのだろうか?
 元を辿り最後に行き着くのは生みの親であるレヴェナだ。
 しかし、これがレヴァナの意図する〈黒の剣〉の姿だったのだろうか?
 〈黒の剣〉はいつ道を誤った?
 アダムは〈黒の剣〉を握り直して大きく薙いだ。
「ククククッ……我は此の青き星の支配者となるのだ。覇王の剣に相応しいではないか!」
 切っ先がセレンに向けられた。
「血が足りぬ」
 邪悪に染まったアダムがセレンに突撃する。
 セレンは上空に吹き飛ばされたあと、そのまま地面に落ちてしまい、今立ち上がろうとしている最中だった。
 迫る刃の切っ先に気づいてセレンが眼を丸くする。防ぐことも、躱すこともできない。
 切っ先はセレンの法衣を貫き――肌の前で止まっていた。
 アダムは自分の足下を睨んだ。
「何者だ!」
 地中から飛び出ている手で自分の足首を掴んでいる。アダムはその足を大きくほぼ真上に蹴り上げた。
 砂を舞い上げながら埋もれていた人影が飛び出し、そのまま天高く飛ばされた。
「出してくれたお礼は言わないからな!」
 アレンだった。
 放たれる〈ピナカ〉の輝く3本の矢。
「やはり先に片付けなくてはならないのは御前のようだ!」
 矢は瞬く間に〈黒の剣〉に吸収され、斬撃の衝撃波がアレンを襲った。
「ぐわっ!」
 衝撃を躱しきれず胸に喰らったアレンが吹き飛んで地面に落ちた。
 仰向けになったアレンの胸から火花が散る。機械の半身である片方の胸の装甲が、爪で抉られたように穴が空いている。それでもアレンは歯を食いしばって立ち上がった。
「まだまだ!」
 ――歯車はまだ鳴り続けている。
 仁王立ちをするアレンにアダムは斬りかかった。
「何故立ち上がるのだッ!」
「負けたくないからに決まってんだろ!」
 振り下ろされた〈黒の剣〉を躱し、アレンはアダムの懐に入ると、渾身の拳を腹にお見舞いした。
 腹に喰らいながらもアダムは体勢を崩さなかった。そのまま〈黒の剣〉を薙いでアレンの胴を真っ二つにしようとした。
 アレンの足の裏を擦るか擦らないかの距離を刃が通り抜けた。飛び上がって〈黒の剣〉を避けたのだ。そのままアレンはアダムの顔面を蹴り上げた。
 顎を上に向けながらアダムが後方に飛ばされ、背中から倒れそうになったが、片足を引いて踏みとどまり、その足を蹴り上げて跳躍し、アレンの脳天に斬りかかった。
 機械の手を突き出したアレン。
 これまで何度も〈黒の剣〉には苦い思いをさせられた。はじめてルオと闘ったときには、機械の腕を切り落とされ生死の境を彷徨った。今まではアレンの装甲では、その刃を防ぐことはできなかった。
 が、アレンの手のひらは〈黒の剣〉を受け止めていた。
 口と眼を大きく開いて驚愕するアダム。
「何故斬れぬ? いや……何故、〈黒の剣〉に喰われ朽ち果てぬのだ?」
 もはやこの周辺は死の大地と化していた。
 人間も機械人も物も、朽ち果て砂に還って逝った。無事なのは〈生命の実〉に守られたセレンだけのはずだった。
 裂かれた胸の装甲の奥底で燦然と輝き出す歯車。それは歯車の形をしていたが、アダムにはわかった。
「まさか〈生命の実〉だとッ!」
 その輝き、その溢れ出す生命の息吹、まさしく〈生命の実〉!
 〈黒の剣〉から闇が霧のように溢れ出す。
 地獄からの悲鳴。
 アレンがセレンに目を向ける。
「ぼさっとしてないで手伝えよ!」
「は、はい!」
 駆けつけたセレンが錫杖の柄で〈黒の剣〉の刃を押し戻そうとする。
 噴き出した闇は七つの首を持つ竜のように不気味に蠢き暴れ狂う。