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戦場の兵士

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 サムは官僚と言う言葉に一つのアレルギーをもっているらしかった。どうやら、昔付き合ってた女を官僚にとられたかららしいが。
 俺は酒のせいで少しだけ逸れた意識を元に戻すとカリスの言葉を待った。
「その可能性はある。だが、我が国は共和制をとる民主主義国家だ。政治家や官僚達が何を考えても国民を納得させられないことには戦争を始めることは出来ない。」
「だったら、戦争をおっぱじめるきっかけは国民だってのか?」
「そうとも言える。しかし、ここで一つトリックがある。国民感情はいったい何に誘発されて起こる?」
 それは、マスコミではないか。と俺が答えるとカリスは気をよくしてその通りと指を鳴らした。すこし気障な振る舞いだがそれがカリスに妙にあっている。
「さすがだ。まさにその通りだ。」
「オイオイちょっと待てよ。だったら、戦争はテレビ屋だか新聞屋が始めたとでもいうのか?そいつはちと強引すぎるぜ。」
「まあ慌てるな。何もマスコミが戦争を起こしたいから起こすとはいっていない。」
「では、最初の話に戻してみるか。そもそも、戦争をすることで利益を上げる物はいったい誰なのかと言うことだったね。」
 戦争で直接的な利益を得る者、それは言う必要もない。俺たちの装備品を製造している軍需産業そのものだ。
「そうだね。私たちがもっているこの銃、かぶっている鉄兜、軍服、靴。それだけじゃない、缶詰に珈琲、煙草、マッチ、ナイフにフォーク、缶切りに至るまで。戦場ではあらゆる物が必要だ。そして、それを供給する産業は常にそれを供給し続けなければならない。そうでなければ戦争に負けてしまうからね。莫大な利益だ。こんなおいしい話はない。政治家、マスコミ、軍需産業、そして国民。どうだい?少し見えてきた気がしないか?」
 やはりカリスの言うことは面白い。頭の悪い俺でもその四つが複雑な図形になってぐるぐる回っている様子が思い浮かべられる。それにしてもまあ、連中もやっかいなことを始めたもんだ。前線に出てこない連中はおそらく今頃本国でげらげら笑って金の海にダイブしていることだろう。
 羨ましいものだ。俺もおこぼれに預かりたいね。
作品名:戦場の兵士 作家名:柳沢紀雪