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ゲップ羊と名ピアニスト

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「羊?」
「そう、羊」
 待っていた答えに合点がいかないのか、納得しきってない様子で羊という言葉を反駁する黒川。
 そんな様子も想定済みだったようで、ぽかんとする黒川に、久保田は詳しい説明を続ける。
「あの国はな、国民の数よりも羊の方が多いって言う面白い国でな。そんな溢れんばかりの羊のゲップなんだってよ、問題視されてんのは」
 詳しい説明にやっと謎が解けた様子の黒川は何度も頷く。
「へぇー、羊のゲップ。へぇー。そんなになんだぁ」
「らしいぜ」
「で?」
「ん?」
 二人の視線が交錯する。
「なんでそんな話を今するの?」
 視線を絡ませたまま、しかし互いの気持ちはすれ違う。
「え?なんで?っていうか、面白くない?この話?」
 黒川のこの反応は予想外だったのか久保田は視線を泳がせながら、しどろもどろに答えを取り繕う。
「ん、うん。まぁ、話自体は面白かったけどさ」
「いや、この部屋に案内されて、待ってろって言われたっきり30分以上、何の音沙汰もなく待ってるじゃん?なんかつまんないかなぁーって思ってさ。あれかな不謹慎だったかな?」
 机の上に投げ出していた足下ろし、椅子から立ち上がると大して広くもない部屋をうろうろしながら久保田はつらつらと言葉を紡ぐ。
 誰が見ても落ち着きのない様子も当然と言えば当然だった。自らの時計を持っておらず、部屋にも時計はなかったため久保田が今し方口にした言葉は実は正確でなく、彼らがこの部屋でいつともわからぬその時を待ち初めてからもう少しで1時間が経とうとしているのだ。
 彼らは気づいたとき見知らぬ橋の上に居た。正面に見えるのは大きくはあるものの余計な装飾は一切見あたらず、どこぞのお役所の施設かと思われる建物。その前に横たわる川にかけられた橋の上に彼らは居たのだ。
 なぜ、こんな所にいるのか。さっきまで自分たちが居たのは、と記憶を探ろうしたところで目の前の正面玄関が開き、中から背広の男が現れた。
 なにが起こってるのか分からない久保田と黒川は背広の男の案内するままに建物の中に入り、その中の一室に案内された。
「あれ?確か自分たちは……」
 案内される間久保田と黒川は同じことを考えていた。急に橋の上に居る前の記憶。
 そうこうしている内に、8畳ほどの待合室に座っていた。
 背広の男は一言、