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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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わが家の怪

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─壱─ 《白い影》




 最初に【それ】を見たのはいつだったか……たしか、小学校4年生くらいだったと思う。
 
 その晩。
 両親は近所の知り合いの家に出かけていて、姉とわたしの二人で留守番をしていた。
 わたしたち姉妹には弟がいるが、その日はたぶん親戚の家に泊まりに行ったかして、不在だった。

 とにかくその晩、家にいたのは中学生の姉とわたしの二人だけだった。
 
 わたしの生まれ育った町は、漁師町で朝が早い。当然夜寝るのは早く、8時には床に入るのが習慣だった。
 
  
 けれどその日、8時になっても両親は帰ってこなかった。それでも、わたしたちはいつものとおり、8時には床に入るつもりでいた。
 
 わたしたちの部屋は、母屋から別の離れにある。姉がそっちへ行こうとした。
 ところが、なぜかその晩、わたしはその離れの部屋で寝るのがいやで仕方がなかった。

「今日は、こっちで寝ようよ」

 と言ったわたしに、姉は一瞬「なんで?」というような顔をしていたが、気軽に承諾してくれた。

 ところが、さらにわたしは姉にこういったのだ。

「一緒に寝て」

 布団を並べて寝るにもかかわらず、なぜかわからないが、その日のわたしは一人で寝るのがたまらなく怖かった。
 しぶる姉に頼み込んで、一つの布団で眠ることになった。

 寝入ってから、どのくらいたったのか。

 トイレに行きたいわけでもないのに、わたしはふと目を覚まし、そして、何気なく床の間の方に目をやった。



 !!!!!!!!!




 たちまち、わたしは全身に冷や水を浴びたようにぞっとした。




 白い影が床の間に立っている。
 髪の長い、着物を着た女の人のようだった。

 わたしはあわてて布団に潜り込み、姉を揺り起こした。

「ねえ、起きてよ。起きてよ」

 しかし、姉はちっとも目を覚ましてくれない。

「おねえちゃん! 起きてよ」

 何度も揺すったが、まったく起きる気配もない。

 わたしは【それ】がどうなったか、怖いものみたさで、そうっと布団から顔を出した。



 すると、もうその姿はなかった。



 そのうち外で声がして、それが両親だとわかると、ほっとしてわたしは眠りに就いた。




作品名:わが家の怪 作家名:せき あゆみ