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早稲田文芸会
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嵐の環・台風の虹彩(酒井貴裕)

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  うひょう

とだけ記されていた。坂上は吐きそうになるまでへらへら笑い続けていたが、彼はヴェイゼンがすでに死んでいることは知らずにそうしていたのだった。彼は自分を抑えるべく隣の席のブロンドの首にキスをした。振り向いた女と舌の根で抱き合ったその瞬間、彼は抑えきれずにすべてゲエっとしちゃったのだった。
 彼は店を飛び出してどこかの渓谷に辿り着き、そこで釣りを楽しんだ。大小六匹釣れたところで遠くで乾いた銃声が響いた。狩猟ごっこだ、と彼は思った。やつらのごっこには共感できない、ただの金持ちでいることには何の楽しみもない。人生に挑むことを忘れてはいけない、命というあだ名だらけの怪物とどう渡り合うか、鹿を相手に木陰から攻めるようじゃ駄目なんだ、どれだって勝手に終わっちまう、生活が手綱を噛み切ってしまうんだ。ライオンの、その瞳のダイアモンドを握る人生だ、手に出来たへこみと歪みきったライオンの視界――何かとそういう感じじゃないのか、とりあえず今は。
 坂上はそれから日暮れまで水切りをして遊んだ。ときどき水を掠めた石が不思議な伸びを伴ってぐんと森のほうへと点になっていった――鹿は殺せなくとも自殺することはない、あいつらいつまでも角を追えばいいさ、脇腹の斑の美しさに気付かないふりで爪を研いではただ振り上げるだけの俺――感傷さに笑いが止まらなくなった。その晩はニジマスを焼いて腹を満たす野宿を選び、まだ葉の青い秋の夜を眠った。鹿が来たなら抱いてやろうとも思ったが、一匹の虫も彼には寄らなかった。
 魚の焦げた骨――