【小さな幸せ10のお題】「お風呂」
「ははは、間抜け」
力なく笑って、タオルでそれを泡にし、紫色になった泡で体中を洗ってやった。
――あんなに楽しみにしてたのにな。
起きたらまた騒ぐんだろうな。光はシャワーの温度を少し上げ紫の泡を丁寧に洗い流した。
またしばらく浴槽に漬け、抱き上げてシャワーで流す。
冷えてしまった身体に王子の体温は心地よかった。
腕の中の軽くて華奢で暖かい身体を抱きながら、手のかかる子供ほど可愛いという世の親心を思う光だった。
作品名:【小さな幸せ10のお題】「お風呂」 作家名:井沢さと