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卜者

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自分がそういわれているのを知ってはいたが、改めて目の前で言われると微妙なものだ。
しかし、山崎はまったく意に介した様子は無い。
「なんや、仲良くやれそうです」
言って、パッと手を離した彼はトトトッと壁際に走り、竹刀をもう一本取るとそれを斎藤へと放った。
あわててそれを左手で取る斎藤。
「というわけで、お近づきの手合わせを頼んますわ」
言って正面に構える山崎。
っと・・・そのとたん・・・先ほどまでの柔和な雰囲気が霧散したことに、気づいて斎藤はハッとした。
顔は先ほどと同じ、人好きのするような微笑を浮かべたまま・・・・しかし、さきほどとは目が違った。
人を穏やかにさせるような細い瞳が・・・今は正面から人を射抜き、心のそこまでを見透かさんとしている。ゆらりと揺れた竹刀の先に違うはずのない殺気がやどっている。
何が、戦いが好きではないだ。
斎藤は思った。
食えない男。
一癖も二癖もあるような男。
腹のそこを見せない男。
尻尾をつかませない男。
忌々しい・・が、好ましい。
斎藤がふっと心からの微笑を浮かべて正面に対すると、山崎の目に警戒とそして興味の光がともる。
「・・・・面白い人ですね」
「お互い様でしょう」
仲が良いというにはあまりにも危険なものをはらんだ微笑を交わす二人。
・・・・・動いたのは、山崎が先だった。
作品名:卜者 作家名:あみれもん