グリーンオイルストーリー空の少年たち 2
「目をまるくして、そりゃもう、かわいかったんだから。ほんと、子犬みたいね。」
「そんな子犬がいま、猟犬にでもなろうとして、必死に筋トレしてるよ。」
「ジル、あなたも鍛えたほうがいいんじゃないの。レイニーには体力で負けちゃうわよ。」
「いいんだ。僕は、ココではまけないから。」
ジルは自分の頭に指をさした。
「ジルは、口で負かすタイプだもんな。」
「女の子みたいな顔で体鍛えちゃったら、なんだかバランス悪くなりそうね。」
「兄さんになじられて、泣いているうちは、女の子みたいな顔から変わることはないよ。」
「言うわね、ジル。」
「僕は、レイニーに体力で負けても、泣いたりしないよ。悔しくなんかないもの。」
「フレッドもそう言ってたわ。ロブにまけても悔しくないって。」
「フレッドって、ロブのお兄さんで、長兄だったっけ。」
「そう。ゴメスのおじさんに、フレッド、ジリアン。ほんと3人は家族ってすぐわかる、すごく似てるもの。」
「似てるって、よく言われるけど、あまりうれしくない。」
「そうねぇ、口の悪いところは、ロブに似ているけど、沈着冷静なのは、フレッドに似てる。頑固なところは似てなくてよかったわよ。」
「頑固なところは、レイニーが似てるんじゃないの。」
「フレッドが生きてくれていたら、ロブも無茶なことしたりぶっきらぼうになったりしないのに。」
ジゼルは、料理の作業の手を止めて、みつめていた。
「どうして、あんなふうになっちゃったかな。」
スタンドフィールド・ドックの崖のしたには、雑草の生えた滑走路があった。
崖の下に穴があり、滑走路は、そこへのびていた。
穴の置くには、格納庫があり、使われていないその倉庫には、空挺の残骸があった。
そこに、ひとりの男が立っていた。ロブだった。
ロブは、空挺のさびれた機体に手をやり、愛しそうに撫でると、額を機体にたたきつけた。
作品名:グリーンオイルストーリー空の少年たち 2 作家名:久川智