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KNIGHTS~before the story~

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知らせ


「先週、商店街の近くであった事故で亡くなったの、浅井監督の元奥さんらしいよ」
 朝練の後、着替えをしながら同学年のチームメイトが放った言葉に、全員が固まった。
「…カジ、それ本当か?」
 訊ねれば、カジは真剣な顔で頷き肯定する。
「うん。うちの親、葬儀屋に知り合いがいてさ…、間違いないって。密葬だったらしいよ」
 話を聞いて一番に浮かんだのは、一人の少女。
 監督は去年離婚して、一人娘のあの子は奥さんと暮らしていたはず。
「…なっちゃんは、どうしてるんだ?」
 やはり皆そこを気にするのだろう、隣にいた別のチームメイトが疑問をぶつける。といっても、彼女と関わりがあるのは二年生のみなのだが。
「分かんない。昨日、家に行ったけど留守だったみたいで会えなかった」
 今日の部活後にでもまた行くつもりだけど、お前らどうする?
 そう言われて、俺たち二年生は全員頷いた。線香を上げるとかもあるけれど、あの子がどうしているのかが気になってしょうがない。
 幸い、今日は午後授業がない上にグラウンドを使えないから、放課後に三年生五人揃って行くことになった。なっちゃんもまだ忌引き中だろうし、それに冬休み前で中学だってもう短縮授業期間な筈だから、家にいる確率は高い。
 とりあえず、授業が終わったらまた部室に集まろということになって、解散になった。
「ノリさん」
 鍵閉めをしないといけないから、皆が出ていくのを待ちながらゆっくりと荷物を片付けていると、後輩に声を掛けられる。
「どした、ナベ?」
 他のメンバーは出ていったようで、部室には俺たちだけしかいなかった。窓の鍵がかかっているかを確かめながら、後輩の様子を伺う。
「『なっちゃん』って、誰なんすか?」
 どうやら、俺たちが揃いも揃って心配している存在が何者か気になったらしい。そういや、一年生は彼女に会ったこともなかったな。
「浅井監督の娘さんだよ。前はよく練習見に来てたし、試合の応援だって欠かさず来てくれてたんだ」
 監督が離婚してからは、ぱったり来なくなってしまったけれど。
「俺たちにとって、なっちゃんは妹みたいなもんなんだよ」
 向こうはもう、『お兄ちゃん』だなんて思ってないだろうけれど。
 監督が家庭よりも俺たち野球部に時間を多く割いたことに対し、奥さんが不満を持ったことが離婚の原因だ。奥さんに引き取られたなっちゃんが俺たちを避けるのも当然だし、恨まれていたって仕方ない。
「それでも、会いに行くんすね」
 部室の扉に鍵を掛ける俺に、静かに後輩が言う。
 辛くないんすか?
 そう言いたげな表情だった。
 確かに、辛くないと言えば嘘になる。なっちゃんに会って何を話せば良いかなんて分からないし、拒絶されるのが恐い。
 だけど、そんなことを言っている場合じゃないんだ。
「大事な妹だからな」
 放っておくなんて出来ない。
 そんなことしたら、本当にお兄ちゃん失格だ。
 だから俺たちは、キミに会いに行くよ。

作品名:KNIGHTS~before the story~ 作家名:SARA