自己嫌悪
私が患者の女性を眠らせた瞬間だった。確かに彼女は眠った。それなのに彼女は突然立ち上がりこう言った。
「あんたのインチキな催眠術に掛かるとでも思ってるの。ばかな男。それでよく今までやって来れたわね。もういいわ。」
そう言って彼女は出て行った。結局催眠治療といったものは何一つ出来なかった。私の催眠に掛からない人間は初めてだ。今まで一度だって失敗したことなんて無かったのに。それだけが私の支えだった。許せない。失敗した自分がどうしようもなく。嫌だ、自分が嫌だ。もう駄目だ、もう続けていく自信が無い…。
彼は自信を喪失して自己嫌悪になってしまったみたいだ。