バニラエッセンスの魔法
夜、会社から帰ったパパは首をかしげた。
「今日は、誰の誕生日だっけ?」
笑って答えないわたしたちの顔を見て、パパはわかってくれたらしく、おいしそうにたくさん食べてくれた。あとで胃散を飲んでいたけど。
いくみさんとわたしは約束した。
「中学校の入学式の日は、とびきり豪華なデコレーションケーキを作ろうね」って。
窓の外には、銀色の月の光をうけて、桜の枝が光っている。
その小さな堅いつぼみは、春が近いことを
ひっそりと告げていた。
作品名:バニラエッセンスの魔法 作家名:せき あゆみ