断頭士と買われた奴隷
それからまた月日が流れ、俺達の世界は新たな変化を迎えている。
ガスパドに紹介された仕事により俺が郵便の配達員、アーミラは近くの酒場でウェイトレスをすることになった。給料は安いが、二人で力を合わせ何とかやっていけている。お互いが支え合う、対等な関係というやつだ。それは思っていた程悪いものではなかった。
「どうしたの、兄さん?」
そんな事を考えているとアーミラがおタマを片手に寄ってきた。最近酒場で少しずつ料理を教わっているらしく、今もその成果を発表すると息巻いている。
何でもない、と頭を撫でてやると目を細め嬉しそうな顔をする。
「……ねぇ、兄さんは今幸せ?」
「そうだな、幸せだと思う。お前はどうだ?」
仕事が替わり生活は少し苦しくなった。だけど俺一人ではなく妹と二人で協力し生きていくようになってから、以前には無かった充実感を味わっている。
「そんなの決まっているじゃない。兄さんが幸せなら、私も幸せよ」
照れくさそうに笑うアーミラ。俺はお前がいてくれるだけで幸せなんだ。お前が笑っていてくれるだけで俺は生きていける。妹を護る為なら、彼女が望むなら何だってできる。
今まで知らなかった、家族がこんなに暖かいものだったなんて。知らなかったからこそ心の何処かで求めていたのかも知れない。
こんな気持ちを言葉にするのは恥ずかしくて、代わりに優しく頭を撫でてやった。
「お前に会えてよかった」
「私も兄さんに会えてよかった」
「大好きよ、兄さん」
作品名:断頭士と買われた奴隷 作家名:大場雪尋