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ゼロ

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(1)建物に窓があることによって、(ア)内側と外側は窓の面に和声を張ることができる。(イ)外の光は死に場所を見つけることができる。(ウ)建物は不要な密度を排泄することができる。(エ)植物の有機的な欲情は建物の無機的な怒りに威嚇される。
(2)私は布団の中で眼を覚ます。そして、起き上がり、カーテンを開けて窓の外を眺める。窓の外は一面の草原で地平線が見えた。私はいつしか飽きて窓から目を逸らす。すると私はまた布団の中で目を覚ます。カーテンを開けるまでは現実だが、窓の外を見るとそれはもはや夢であり、窓から目を逸らせば夢から醒めてしまうのだ。生命のかけらもない月面に飽きてそこから目を逸らすと、私はまた布団の中で目を覚ます。

(1)(ア)私は窓を開け、外へと手を通すことで、内側と外側との和声にリズムを添える。私の手の皺のリズムは光の呼吸に均しい。そのリズムに合わせて、窓には無数の空間が集まってきては面になる。(イ)部屋の中では外から入ってきた光たちが死の苦しみでのたうっている。光の先端・後端は際限なく鋭く、壁や床などに刺さっては抜けてを繰り返している。私の手の甲に一条の光が刺さり、光は血を吸って膨れていく。(ウ)建物の余分な密度にはすべて名前がついている。例えば卓也。卓也は天井で寝て暮らしているが、最近近所のコンビニでバイトをしているらしい。いずれ窓から排泄されることを知っている卓也はそれでも明るく生きている。(エ)植物は常に私の怒りの外側、そして私の悲しみの内側にある。怒りと悲しみの狭間で突発するのが植物であり、植物の表現の媒体が欲情である。建物の怒りは私の怒りよりも内側にあり、植物の欲情の素子である。植物は表現するためには常に建物の怒りを組み立てねばならず、常に兢々としている。
(2)そんなことを考えているうちに、いつの間にか外は暗くなった。向かいのマンションの通路には明かりがともった。マンションが互いに電話し合う時間になった。私は夕食の支度をするために窓から目を逸らした。すると私は、再び布団の中で目を覚ました。
作品名:ゼロ 作家名:Beamte