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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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マ界少年ユーリ!

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第4話 氷境の霊竜ヴァッファート〜キャベツよ永遠に・・・8


 まったりお茶を飲んでくつろいでいるカーシャの目の前に、テーブルが崩壊する勢いでクーラーボックスが叩き置かれた。
「シネ!」
 叩き置いた張本人の第一声はそれだった。
 カーシャはめんどさそうにユーリに目を向けた。
「妾に向かってシネとはいい度胸をしておるな」
「シネ!」
 それ以外の言葉を忘れてしまったようだった。
 カーシャの目の前には白いマスクした一団がずらーっと並んでいた。被害者の会のみなさんだ。
 どっかの誰かさんのくだらないおつかいのせいで、み〜んな風邪をひいてしまったのだ。
 ユーリはカーシャの胸倉を掴もうとしたが、爆乳が眼に入って手を引っ込めた。でも怒りは治まっていない。
「コレのせいで、どれだけ死に掛けたと思ってるんですか。サキュバスの力を取り戻すなんて大嘘じゃないですか!(コロス、今日こそは絶対にヌッコロス)」
「そんなこと言ったか……まったく記憶にないな(認めたが最後、ウソは死ぬまでつき続ける……ふふっ)」
「このアマがっ!」
 ブチ切れたユーリがカーシャを殺そうとしたのを、ジャドがそっと止めた。
「やめろ……俺が殺る」
 おまえがやるんかい!
 血の雨が降る寸前、ルーファスとアインが慌てて止めに入った。
「待った、ちょっと待った。暴力沙汰はよくないよ、平和的に解決しよう!」
「そうですよ、みんな無事に帰還できたんですから。それにジャドさん、わたしたちは報酬をもらえるから別に怒らなくてもぉ」
 ユーリはルーファスの胸倉を掴み、ジャドはアインの胸倉を掴んだ。
「「よくねぇーよ!」」
 ステレオ再生。
 仲間割れをしている四人をほっといて、ウキウキ気分でカーシャはクーラーボックスをオープン!
「なんじゃこりゃー!」
 カーシャの眼に飛び込んできた無残な光景。
 ユーリはニヤッと笑った。
「お気に召しましたでしょうかカーシャ先生♪」
「なんだこれは、溶けてしまっているではないかっ!」
「全部ヴァッファートから聞きましたよ……カキ氷ですってね!」
「妾の妾のカキ氷が……(カーシャちゃんちょっぴり傷心、ふふっ)」
 クーラーボックスの中に入っていたのは溶けた氷だった。
 どうやらカーシャは無性にカキ氷が食べたくなって、下々の者どもに極上の氷を採りに行かせたらしい。
 しかもあの場所は危険だったりするので、保険かけて複数に採りに行かせて『一匹くらい死んでもいっか』みたいな打算をしていたに違いない。
 ちなみにジャドとアインは依頼内容をちょっぴり勘違いしていて、『ヴァッファートから取って来い』というカーシャの発言を、ヴァッファートを倒して財宝かなにかを奪って来るのかと思っていたらしい。
 とにかくカーシャの野望は見事に打ち砕かれたのだった。
 マスク軍団は卑劣な魔女を討ち果たしたのだ。
 だが――。
「ルーファス妾に謝れ!」
 カーシャに言われてルーファスは土下座した。
「ごめんなさい、私は止めたんだよ嫌がらせはよくないって。ごめんなさい、ごめんなさい、どうか許してくださいカーシャ様!」
 この主従関係だけは絶対のようだ。
 呆れてしまったユーリ。
「もう行こう(なんか百年の恋も冷める感じ)」
 ジャドもすっかり怒りが冷めてしまった。主にルーファスの情けない姿を見て。
「そうだな。では……キャベツ!」
 いきなりジャドはカーシャにキャベツを投げつけた。
「妾にキャベツを投げつけおって、なにをするのだ!」
「俺の国の風習ですよ。とりあえずうっぷんが溜まったときはキャベツを投げつけるんです」
 そーなんだ。と思った全員はキャベツを手にとってカーシャに投げつけた。
「「「キャベツ!」」」
 キャベツまみれになったカーシャが喚く。
「おのれ許さんぞ(食べ物を粗末するともったいないオバケが出るのだぞ、妾は信じてないがな……ふふっ)」
 もはや誰も聞く耳を持っていない。
 ルーファスは土下座したままなので、キャベツの怨みは彼の土下座で許してもらうってことで♪
 さーってと、そろそろ用も済んだので部屋を出ようとしたとき、今までふにふにしていたローゼンクロイツに異変が!
「はくしゅん!(にゃ)」
 青ざめた四人はカーシャとローゼンクロイツを残して部屋の外に飛び出した。
 ジャドが日曜大工セットでドアに木を打ちつけて塞いだ。
「これはサービスだ」
「ジャド、グッジョブ!」
 ユーリは爽やか笑顔。
 その笑顔とは対照的にドアの向うからは悲痛な叫び声が聞こえていた。
「いやぁぁぁぁん!」
 みんなそろって聞こえないフリ。
 ユーリは少しはしゃいだようすでみんなの顔を見つめた。
「ねえ、今からスイーツ食べに行きませんか、ビビちゃんも誘って♪」
 スイーツと聞きつけてビビがユーリの目の前ににょきっと現れた。
「こんにちわんわん! あたしのこと呼んだぁ?」
「はい、ビビちゃんも一緒にスイーツ食べに行きましょう。もちろんルーファスのおごりで」
「私のおごりなの?」
 声は不満そうだが、顔はニッコリ笑顔だった。
 アインも瞳をキラキラ。
「わたしもご馳走になってよろしいんですか!」
 ユーリは大きくうなずいた。
「うん、あとでローゼンクロイツ様も呼ぼうね。ジャドも来るでしょ?」
「いや、俺は仕事がある。では、さらばだ!」
 いつものようにハトやら紙ふぶきを撒き散らしてジャドは姿を消した。
 ユーリはちょっと残念そうな顔をしたが、すぐに笑顔でビビとアインの腕を掴んで引っ張った。
「早く行きましょう。ところでビビちゃんのケータイの番号教えてくれませんか?」
「あたしケータイ持ってないんだ。持ってると親が二十四時間連絡してくるから」
「アインは持ってないんだよね?」
「はい、ごめんなさいです」
「じゃあ……ルーファスの聞いてあげる」
「私も持ってないよ。めんどくさいし、周りも持ってない人多いから。ローゼンクロイツも持ってないしね」
「あはは、そーなんですかー」
 笑いながらユーリはケータイを真っ二つにした。
 前の友達のメモリーは諸事情から全部デリートしていた。だからケータイのメモリーはほとんど空だった。だから新しい友達を登録しようと思っていたのに……。
 みんな持ってないんだってさ!
 ここでユーリはハッとした。
「……しまったセバスちゃんとも連絡取れなくなった」
 さよならケータイ。
 さよならセバスちゃん。
 やっぱり二人はいつまで経っても逢えない運命なのでした。
 でも、今のユーリは心の底から笑っていた。
「(嗚呼、お兄様。ユーリはとっても幸せです、新しい友達もいるし、新しい環境にも慣れてきました)」
 新しい世界に羽ばたいたユーリには輝く未来が待っている。
 ユーリの胸に宿った気持ちが未来を切り開くのだ。
「またサキュバスの力も失っちゃったけど、愛しい人たちのために力を使えたら、人は決して後悔なんてしませんよね。あのとき使った力が最後だったとしても、アタシは後悔しませんから、だってルーファスも助かったんだし。あ、これは浮気じゃありませんからね、アタシが世界で一番愛してるのはお兄様ですから ♪)」
 今日も世界が愛に満ち溢れ、みんなが幸せに暮らせますように♪

 おしまい♪