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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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マ界少年ユーリ!

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第3話 OH エド捕物帖オウジサマン!6


 鍛冶対決当日になっちゃいました!
 そんなわけでユーリも会場になったダイカーン屋敷に来ていた。
 どーにかこーにか、鍛冶対決は?対決?になったらしい。つまり、あんなに頑なだったドラゴンファングが献上する剣を用意したのだ。
 その話を聞いたダイカーンは大慌て、さらに薔薇仮面の警備で大慌て、会場は混乱していた。
 ユーリとジャドはドラゴンファングが献上する剣の警護していた。
 部屋にいるのはユーリ、ジャド、そしてアルマの三人だけ。店主のおやっさんは未だに行方不明だった。ちなみにアインは幼い弟の子守らしい。
 ジャドが部屋を出て行こうとする。
「俺はちょっと出かけてくる」
「どこ行くの?」
 ユーリが尋ねるとジャドは不適な笑みを浮かべた。
「絶対に勝ってもらわなくては困るからな。そのためならどんなことでもする」
 やんわり犯行声明。
 ユーリは笑顔で聞き流した。
「いってらっしゃい、トイレに!(なにするかわからないけど、絶対悪巧みに決まってる)」
 ジャドはきっとトイレで悪いことをする気だ。水を流さないとか、トイレットペーパーを隠したりする気だ。そーゆーことにしておきましょう。
 今日も不機嫌そうなアルマはタバコに火を点けようとした。それをユーリが止める。
「ここ禁煙ですよ。吸うなら別の場所でどうぞ」
「ったく、うるさい子だね……わかったよ」
 怒ったようすでアルマはケツをフリフリして部屋を出て行ってしまった。
 独り残されてしまったユーリ。
「……ヒマ」
 ヒマを持て余しているユーリの前にある長方形の木箱。あの中には献上する剣が入っているハズだ。
「(ちょっと見てみようかな)」
 ちょっぴり好奇心を抑えられず、ユーリはコッソリ中身を確かめることにした。
 木箱を開けると地味な長剣が入っていた。
「(なんかガッカリ。でも、見た目は地味でもその刃はダイヤモンドも切り裂く業物だったりして)」
 ユーリは鞘から剣を抜いて構えた。
「(スゴイ、物凄く軽い。重さないから威力は劣るけど、スピードはあるし疲れも堪らない。これで切れ味があったら最強じゃん)」
 剣術の心得があるユーリは剣を振るった。
「えい!」
 くにょ♪
「ぐわーっ!」
 剣が、剣が……くにょって曲がりやがった!
 刃がまるでアルミのように曲がってしまった。
「ウソ アタシ悪くないし、こんなことありえないし、落ち着けじぶーん」
 滝のように汗を流しながらユーリちゃん顔面蒼白。
 そんなとこへドアをノックして私兵が部屋に入ってきた。
「失礼します、そろそろ剣を持って会場に……ってお前なにやってんだ!」
 犯行現場を見られてしまった。
 焦るユーリ。
「えっ、いや……まさか献上するハズの剣を壊してしまったとかってことはないですから、絶対に」
「あるだろ!」
「ないです、あはは」
 しかも、さらにとんでもない展開になろうとしていた。
「まさか……おまえ薔薇仮面だな!」
「はい?」
「変装してるんだろ。大変だ、薔薇仮面が現れたぞ!」
 私兵は仲間を呼んだ。
 私兵Aが現れた。
 私兵Bが現れた。
 私兵Cが現れた。
 唖然とするユーリ。
「うっそ〜ん!」
 もうなにを言っても聞いてもらえないっぽい。
・たたかう
・まほう
・どうぐ
▽にげる
 ユーリは曲がった剣を持って逃走した。
 逃亡者ユーリ!
 部屋を飛び出して廊下を走るユーリ。走れば走るほど私兵の数が増えていく仕様だ。
「なんでアタシが追われなきゃいけないの!(絶対にいつか訴えてやる!)」
 でも今は疑いが晴れるまで逃げるしかない。
 屋敷に鳴り響くサイレン。なんか騒ぎがどんどん大きくなっている。
 さらにスピーカーからこんな放送が流れた。
《会場にお越しの皆様、ただいま武装した凶悪犯が屋敷を逃亡中です。係員の指示に従って速やかに避難してください》
 今日からユーリちゃんも凶悪犯の仲間入り♪
 武装と言ってもナマクラの剣。ちょっぴり腹黒いけど凶悪犯というほどでもない。
 でも、ユーリちゃん追われちゃってます!
 廊下を曲がって曲がってユーリはひたすら逃げる。兵士を少しまいたところで、ユーリは女子トイレに逃げ込んだ。
「……はぁはぁ(こんなに走ったの久しぶりだし)」
 ユーリが汗を拭っていると、個室のカギがガチャっと開くがした。
 焦って逃げようとしたユーリの投げかけられる声。
「人の顔を見てどうして逃げるんだい?」
 振り返るとそこにいたのはタバコ臭いアルマだった。
「あ、アルマさん……ご機嫌麗しゅうございます」
「変な子だね……ん?」
「では、ごきげんよう♪」
「ちょっと待ちな」
 逃げようとしたユーリの首根っこが掴まれた。
 そして、持っていた剣を取り上げられてしまった。
「この剣は……?」
「なんていうか不可抗力というか、神が与えたもうた試練というか、事故というのが適切かもしれませんが、不慮の事故という感じだったりするわけで、ごめんなさい!」
 ユーリが頭を下げた。きっと天変地異の前触れだ。
 アルマは笑った。
「外が騒がしいと思ったら、あんたがこれを盗んだのかい?」
「盗んだなんてとんでもないです。濡れ衣を着せられて逃亡してたんです」
「そうかい、なら本当にこのまま盗んで逃げてくれないかい?」
「はっ?」
 唖然とするユーリに剣が押し付けられた。思わず受け取ってしまったが、事情がまったくもって不明瞭だ。
「アタシがこれを持って逃げるって……わかりやすく説明していただけると嬉しいのですが?」
「誰かがウチが出す剣を持ち去ったとなれば勝負は不戦敗だろう。そうすればウチの店の名前も傷つかないで済む、みんな万々歳さ」
「アタシはぜんぜんバンザイできないんですけど。てゆーか事情がまったく理解できないんですけど、なんで負けたがるんですか?」
「負けたかないよ、でも仕方ないだろう。実は剣を鍛えるダンナがいないんだ、それじゃ献上する剣なんて作れやしないよ」
 ついに奥さん自身が、ダンナが?いない?と認めましたよ!
「ダンナさんがタバコを買いに行ってるかとかパチンコに行ってるとか、やっぱり全部ウソだったんですか?」
「……そうさ」
 アルマは気まずそうな顔をしながらタバコに火を点けた。
「でもどうしてウソなんかついたんですか?」
「そんなこと口が裂けても言えないよ」
「まさか……夫婦喧嘩でダンナが家を出て行ったとか?」
「ギクッ!」
 図星のようです。
 ユーリは呆れてため息を漏らした。
「……くだらない。ダンナさんがいないのは娘さんから聞いてましたけど、アタシはてっきり事故に巻き込まれたのかと」
 夫婦喧嘩はある意味人災なので事故です。
「くだらなかないよ、こんなことがご近所さんや常連さんに知れたらいい笑いもんだよ。恥ずかしくて買い物にも行けないじゃないか」
「そーならそー言って鍛冶勝負なんかさっさと断ればいいのに」
「最初は断ってたじゃないか。けどウチが勝手に断ったらダンナに合わす顔がないだろう」
「でも負けてもメンツが潰れるだけでしょう。それにこんな剣じゃ」
 ユーリはふにゃふにゃに曲がった剣を見せた。
 アルマがガシッとユーリの両肩を掴んで真顔になる。