マ界少年ユーリ!
第2話 ドリームにゃんこ in 夢(む)フフ1
ドーンっと一発、住宅街に爆発音が響き渡った。
敵襲かっ!
近くで遊んでいた子供がとある借家を指差して無邪気に笑う。
「やったぁ、またへっぽこだ!」
ご近所さんでも有名なへっぽこ魔導士――ルーファスの家だった。
独り暮らしのルーファスはやりたい放題。
部屋の中は散らかり放題で、床に落ちたマンガや雑誌が国境線を作り、脱ぎっぱなしの服が山を作り、こぼしたジュースが川を作っている。
この惨状をとある爆乳教師はこう名づけた。
――腐海の森。
しかし、こんなゴミの埋立地みたいな場所にも聖域が存在した。
パソコンの周りだけはキレイなのだ!
だいたい普段ルーファスがどこで生活してるのかが伺える。
そして、この秘境のジャングルには洞窟も存在していた。人はそれはこう呼ぶ――地下室への階段!
つまりただの階段だった。
地下室の階段を降りるとルーファスがいた。
この地下室は前の住人が魔導実験室に使っていたもので、大爆発を起こしても部屋はまったく傷つかない。傷つくのはルーファスくらいだ。
大爆発を起こしてしまったルーファスは、床に倒れて生き絶え絶えだった。
「……死ぬかと思った(けど、完璧だと思ったのにどうして?)」
ルーファスは召喚の練習をしていたのだ。
さすがに次はない。
ファウスト先生の?悪魔の契約書?にサインしてしまった以上、今度また追試で失敗なんかしたら……考えるだけ恐ろしい。
そんなわけでルーファスは休日返上で、召喚術の猛特訓をしているのだ。
ちなみに先週の休日も同じように特訓していた。そのときは、どっかのピンク頭の仔悪魔に邪魔され、未知の生命体を呼び出してしまって大変だった。最後は無事に未知の生命体は宇宙に帰還してれたが。
幸運なことに今日は邪魔者がいない!
心置きなく大爆発ができる。
失敗にめげつつも、命がかかってるルーファスはあきらめない。すぐに新しく準備をはじめて、召喚の呪文を唱えはじめた。
床に水生ペンキで描かれた魔法陣が光だす。
マナフレアが少しずつ現れた。
「(いけるかも!)」
今までにない手ごたえを感じるルーファス。
そして、最後の一言を声高らかに叫ぶ。
「――出でよ、インぶはっ」
デジャブーっ!
突如、魔法陣から飛び出した影に膝蹴りを喰らい、ルーファスは鼻血ブーしながら転倒した。
倒れたルーファスの視線に入ったのは、燕尾服を着た謎の男。どこら辺が謎かというと、首から上が黒子の格好!
つまり、黒頭巾を被って顔を隠していた。
黒子は腕にはめていたパペットをルーファスの眼前に突きつけた。
「オイ、ソンナトコニ突ッ立ッテタラ、危ネェーダロ!」
腹話術だった。
「ご、ごめんなさい」
普通は膝蹴りをしたほうが謝るのだが、気弱なルーファスは自分が謝ってしまった。
パペットは辺りを見回している。
「此処ハ何処ダ。教ヤガレ、スットコドッコイ!」
「え〜っと、国から言ったほうが宜しいんでしょうか?(こ、この人形怖いよぉ)」
「オ前人間ダロ、ダッタラ此処ハのーすダロ。のーすノ何処ダ、スットコドッコイ!」
「アステア王国の王都アステアですが……ちなみにここは私の家の地下室です」
パペットは手を広げて驚いたリアクションをした。ちなみに黒子はまったく無反応で、見える透明人間に徹している。
「オオ、ヤッパあすてあ王国ナノカ! オイ、ウチノ小娘ヲ見ナカッタカ?」
「小娘ってどのような感じの?」
「世界デ一番ぷりてぃナ小娘ダ。名前ハゆーり・しゃるる・どぅ・おーでんぶるぐッテンダ」
「それなら知ってますけど」
「オイ、サッサト吐ケ。知ッテルンダロ、サッサト言ワネェート、ヌッコロスゾ!」
パペットでルーファスの顔面をグリグリされた。パペットとキスしまくりだ。
グリグリされ放題で、ルーファスは口を開くこともできなかった。
すると、パペットは逆ギレした。
「何デ、言ワネェーンダヨ。隠スト、ヌッコロスゾ!」
「そ、それはあなたが僕の顔をグリグリするから……(窒息しそうだったし)」
「ウッセンダヨ、ノロマ! モウイイ、俺様ガ自分デ探ス!」
そう言って、パペットに連れられて黒子は姿を消してしまった。
「……なに今の人?」
まるで嵐のように過ぎ去って行ってしまった。
作品名:マ界少年ユーリ! 作家名:秋月あきら(秋月瑛)