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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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マ界少年ユーリ!

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第1話 マ界のマの字はオカマのマ7


 その場所はいつしか〈失われた楽園〉と呼ばれていた。
 広がる不毛の大地。砂埃が空に舞い上がる。遠く先の景色は霧に覆われていた。
「なんだか陰気な場所に来てしまいましたね(マジサイテー、こんな場所に来なきゃいけないなんて)」
 ユーリは辺りを見回しながら言った。
 こんな場所に?ロロアの林檎?などあるのだろうか?
 ロロアは愛の女神だ。こんな不毛の大地など似つかわしくない。色とりどりの花が咲き誇り、美しい小鳥たちがさえずり、清らかな小川のせせらぎが聞こえてくるような場所。そんな場所こそがロロアにはふさわしいのではないだろうか?
 ルーファスが地面に倒れている立て札を見つけた。
「ええっと、左に進むと温泉)」
「こんな場所に温泉なんて湧いてるんですか?(とっくに枯れてそうだけど)」
「右側は字がくすんでいて読めないや。前に進むとなんとかかんとかの林檎って書いてるよ」
「なんとかかんとかってなんですか?」
「字が消えかかってて読めないんだ。でもきっとこれが?ロロアの林檎?だよ。よし、こっちに進もう!」
 ルーファスの指示通り二人は先を進んだ。
 しばらくして、巨大な木の影が見えてきた。
 草木の枯れた不毛の大地にありながら、その巨大樹は青い葉で覆われ、見上げると首が痛くなるほどの高さを誇っていた。
 巨大樹を見たルーファスの感想は以下のとおりです。
「デカッ!」
 一言で済まされた!
 ユーリは深くうなずいていた。
「あれで間違いなさそうですね。カーシャ先生の話だと、あの樹木は何百万年も前からこの場所に立っていたそうです……そう、この地が本当に楽園だったころからです」
「カーシャそんな話してたっけ?」
「あはは、覚えてないんですか?(お前はお菓子食いながらテレビ観てたもんな!)」
 巨大樹のところに行くためには、目の前の柵を越えなくてはいけなかった。その高さはルーファスの身長の三倍くらい。
 ルーファスが柵をよじ登ろうとしていると、呆れながらユーリが声をかける。
「ここに入り口がありますよ?」
「えっ…… うわっ!」
 手を滑らせて地面に落下。ルーファスは尾てい骨を強打した。痛そうだ。
 だんだんルーファスの扱いがめんどくさくなっていたユーリは軽くシカト。さっさと柵の中に入ろうとしていた。
 入り口には文字が書かれていた。各国の文字で書かれている親切仕様だ。
「…… 立ち入り禁止」
 口に出して読んだユーリはかまわず入ろうとした。
 すぐ横でルーファスが不安そう顔をしている。
「待ってよ、入っちゃまずいんじゃないかなぁ?(ヤダなぁ、入りたくないなぁ)」
「行きますよ」
 軽くルーファスの意見ムシ!
 だんだんユーリはルーファスの扱いに慣れてきた。
 巨大樹が近づくにつれて、ルーファスの顔がどんどん恐怖マンガチックになっていく。
 風もないのに木の葉が音を立てた。
 ユーリはピタッと足を止めた。
「なにかいます」
「なにってなに、早く逃げようよぉ!」
「もう遅いですね、あれ」
「うわぁぁぁっ!!!」
 あれを見てしまって逃げようとしたルーファスの首根っこを掴んだユーリ。
「逃げたら…… ぶっ殺しますよ、あはは♪」
 目の奥が笑ってない。
 あまりの恐怖にルーファスは動けなくなった。
「(違う……こんなのユーリじゃない……ぼ、僕の知ってるユーリじゃない!)」
 やっとユーリの本性に気づきはじめたルーファス。
 でも、ルーファスは認めなかった。
「(認めない認めない……きっと僕の聞き間違えだ)」
 さらにルーファスは現実逃避を続ける。
「(あはは、綺麗な花畑だなぁ)」
 現実逃避というか、魂がこの世から離脱していた。
 風が悲鳴をあげた。
 それは威嚇する鳴き声だった。
 巨大樹を降りてくる長くて太い影――大蛇だ。大蛇が降りてくる!
 その大蛇を見てもユーリはまったく動じていない。
「全長約三〇メティートというところでしょうか、言語が通じるとよいですね」
 大蛇の頭からしっぽまでの距離は約三六メートル。不毛の大地でもすくすく伸びやかに育ちました。でもちょっぴり伸びすぎです!
 大地が増え、生暖かい強風と共に低い声が響く。
「立ち去れ侵入者!」
 意外に大蛇の口の臭いは爽やかだった。甘酸っぱいフレーバーだ。きっとリンゴばっか食ってるからに違いない!
 もちろんユーリは立ち去る気などない。
「アーク共用語でのご挨拶ありがとうございます。アタシたちは決して怪しい者ではありません。少しでよいのリンゴを分けていただけませんでしょうか?」
「おのれ盗人め、食い殺してくれる!」
 交渉不可!
 いきなり大蛇が襲いかかって来た。
 ユーリは華麗に軽やかに美しく攻撃をかわす。
 的を外した大蛇の頭が大地を砕き、砂利と岩の雨が降り注いだ。
 こんな相手に肉弾戦で勝てるわけがない。
 ユーリは魔法を唱えようとした。
「マギ・ファイア!」
 ぷしゅ。
 ユーリの手からすかしっぺが出た。違う、魔法がちゃんと発動しなかったのだ。
 生唾をゴックンしたユーリの顔が強張る。
「ま、まさか……(魔法も使えなくなった)」
 サキュバスの力だけでなく、なんとユーリは魔法まで使えなくなっていたのだ。
 ヤバイ、このままだと確実に殺されちゃう♪
 ユーリは慌ててルーファスに助けを求めようとした。
「ルーファス助け……(なにやってんのあいつ?)」
「あはは、待ってよぉ〜」
 綺麗なちょうちょさんと戯れていた。もちろん幻覚です!
 向こう側に半分以上浸かっちゃってるルーファスはもはや戦力外通告。むしろ最初から頭数に入ってなかった。
 大蛇もルーファスことなど完全にスルーだ。
 巨大な口がユーリを呑み込もうとする。
 もうダメだと思ったとき、ユーリは?赤いボタン?を押した。
 魔法陣の描かれた円盤からジャドが飛び出した。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャード!」
 パクッ♪
 出てきていきなり食われたし!
 大蛇はジャドを丸呑みにしてしまった。
 そのお陰でユーリは逃げ出すことに成功。
「アナタの友情は忘れない……さっさと胃酸で溶かされて成仏してね!」
 ウソ泣きしながらユーリ逃走。
 その時!
 急に大蛇が絶叫をあげて天を向いた。
「ギャァァァッ!!」
 天に向かって開いた大蛇の口から飛び出す黒い影。
「俺を勝手に殺すなーっ!」
 見事脱出に成功したジャドは地面に着地した。
 すぐに激怒した大蛇がジャドを噛み殺そうと牙を剥く。
 逃げも隠れもせず、ジャドはフード奥で微かにあざ笑う。
 その瞬間、大蛇の腹の中で大爆発が起きて、腹が風船のように膨れ上がった。
 かろうじて腹は裂けなかったが、大蛇は苦痛のあまり大地を揺らして暴れまわった。
「下賎な人間めっ、我になにを食わせた!」
「ふっ、ネット通販で買った特製爆弾だ(五〇パーセントオフで安かった)」
 ジャドは大蛇に止めを刺そうと隠し持っていた武器を出した。
 なんと、それはバズーカ砲だった!
「喰らえネット通販で買った軍の裏流通品だ!」
 ジャドはただのネット通販好きだった。略してジャドネットただの通販好き!
 オマケなんていらないから、安く売ってくれ!