かいなに擁かれて 第六章
魅華はテーブルの端にあった伝票を取ると先にレジに向かった。慌てて信がそれを取り返そうと魅華の後を追った。
「魅華ちゃんってば、いかん、いかん。はいこれ受け取ってよ」
「大丈夫、大丈夫。たまにはこれくらいさせてよね」
「仕方ないな……、じゃ、タクシーで行こうよ。車拾うからちょっと待って」
店をでた前で流しのタクシーを信は拾おうとあげたその手を魅華はとって微笑んだ。
「贅沢、贅沢はダメだよ。二駅なんだから、電車で行こうよ。信ちゃん」
小さな柔らかな手に、大きなグローブのような手をとられ、ふたりは駅に向かった。
信は、駅がもっともっと遠くにあればいいのに、と思った。
次章へ続く
作品名:かいなに擁かれて 第六章 作家名:ヒロ