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太宰治令和にやってくる

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〇2017年度卒業論文
テーマ
統合失調症とアタッチメントについて
2017年2月1日提出
心理学科
学生番号37871250溝永真央
明栄大学人間学部
統合失調症の治療とアタッチメントについて
目次
参考文献太宰治作「人間失格」について
本論
太宰治の「人間失格を読んで」
彼に愛情というものを教えたかった。
信じあうことを教えたかった。
人はみなあなたの敵ではないことを教えたかった。
選ばれている恍惚より、奈落に落ちても、
落ちた先のもっと庶民の平原の広さを教えたかった。
もしあの人に出会うことができたら、
きっと私なら教えてあげる。
愛の尊さを。


  〇ニューヨークマンハッタン、溝永真央と上石琴音がいる。
真央「オレンジジュ―スが違う」
琴音「オレンジジュースが違う」
まお「ニューヨークのオレンジジュース。なんでこんなに違うんだろ」
琴音「オレンジジュースもいいけど早くセントラルパーク行こうよ」
真央「セントラルパークね」
琴音「そう聖地よ聖地。セントラルパークが私たちの聖地。ああ、サリンジャーのライ麦畑」
真央「とにかく四泊六日のまだ一日目!」
夜マンハッタンのレストラン、真央と琴音パスタを食べる。
真央「うわっ。やっぱうまいわ、このパスタ」
琴音「真央ってみんなと違う思考回路持ってるよね」
真央「なんで」
琴音「ほら、卒業論文卒論の中に詩を取り入れるとか、あれって斬新よねー」
真央「なんか恥ずかしいな」
琴音「でも愛情なんて真央にしか言えない言葉よ。他の人が使ったらふざけてるって」
真央「そんなことない」
琴音「お互い内定も決まった。私達四月から社会人だ。今宵のニューヨーク最高!」
真央「そう私達社会人。イエーイ」
琴音「社会人、イェイ、社会人、イェイ」
真央「社会人、イェイ、社会人、イェイ」
   真央の顔アップ

〇2025年6月19日

〇真央むっくりベッドから起きる。
真央「ああ、朝だ。ああ、社会人クソつまんねー」
   真央の携帯の音が鳴る。
真央「もしもし溝永です」
職員A「あっ、番長」
真央「番長じゃなくてちゃんと施設長と呼びなさい。えっ職員の応募?えっ今つながってる?すぐ転送して」
   真央ペンを捜す。
「はい、もしもしほほえみクリニックの施設長をしてます、溝永です」
(M)ペン、ペン、ペンがない。三色ボールペン。黒使えないじゃん。こっちも。赤出ない。青出た。紙はこれ卒業論文の裏?しかし他にない。
真央「はい。はい。年齢は三十五歳ですね。経験の方は有料老人ホーム?」
(M)んっ?
真央「えっではPSWの資格はお持ちなんですよね?えっPSW精神保健福祉士です。えっ持ってない。介護福祉士?」
(M)ありゃ
真央「あー精神保健福祉士の人しかとってないんですよ。ええ、では、失礼します」
 真央は甲斐なく携帯を切る。
真央「空ぶりかい」
紙に青いボールペン字が書かれているのが真央の目に留まった。
「あっ、卒論のまさに詩の裏に、青ボールペンで書いちゃった。あーまあいいか。」
   真央は寝ころび天井を仰ぎ見る。
(M)そうだ卒論の案もあそこで浮かんだ。この詩を持って玉川上水に行ったらどうだろう。
  〇真央山道を歩く。
(M)うわあ、相変わらずすごい山道。玉川上水は。でも綺麗。携帯に撮ってSNSにのせよう。バズるかな。心洗われる。俳句読もう。
真央「散りゆくままに」「もみじの中から」
「ザバッ」と男が川の中から現れる。
真央「ダザイオサムーーー」
太宰「あれっ。ここは」
   真央は恐る恐る男に近づく。
真央「あのー何してるんですか?結構凝ったコスプレみたいですけど」
太宰「コスプレ?何を言ってるんだ。富栄は?トミエはどこに行った?」
真央「あの、着物までズブ濡れで、けっこう凝った演出ですね」
太宰「さっきから何を言ってるんだ。君は。チンドン屋みたいな服を着て。富栄がいない。また僕だけ助かったのか。富栄、トミエー」
真央「あのーそういうのいいですから。シュールなコスプレもいいですけどせっかく用意した着物がズブ濡れですから一旦家に帰ってシャワーでも浴びた方がいいんじゃないですか?」
太宰「シャワー」
真央「あのう一応お名前窺ってもよろしいですか?」
太宰「僕を知らないのか、太宰治。本名は津島修司」
真央「そうですか。とにかくシャワーを浴びた方が。家はどちらで?」
太宰「家は三鷹だ」
真央「ええ、ちょっと待て。これ、本当ってこともあるの?何なのこのリアル。こんな状況初めてですけど」

〇真央の自宅
真央「あの、理事長ちょっと伝えたいことが、あのですね。そのですね……」
久末「何だね、溝永君。ホームの利用率が下がっているが、伝えることって。ビジネス、ビジネス。何か利用率と関係が?」
真央「それよりなんですが」
久末「それより大事なことがあるのか?」
真央「あのー本当信じて下さるか分からないのですが……理事長、玉川上水を歩いていたらですね」
久末「うむ」
真央「玉川上水から心中しようとした太宰治が流れてきて」
久末「……」
真央「着物はズブ濡れ。三鷹に住んでる。でも当然家はない」
久末「……」
真央「で、どうしようかと理事長の久末さんに相談を」
久末「……溝永君。体調が悪いなら、体調が悪いと素直に言った方がいいな。もっとまともな嘘を。『病んでます』それならそれでいいんだよ。で、用件は?休暇が欲しい?管理者は簡単に変えられないよ。ビジネス、ビジネス」
真央「あーそうなるよな。いや、でも、嘘じゃないんです。あー分かった。じゃあ今から私の家に来てください。とにかく見てください」

  〇真央の家のリビング。理事長が部屋の中で太宰治をまじまじと見る。理事長は緑の生地に黄色と黒ののチェックの入ったスーツに赤いネクタイをしている。
久末「本当にこんなことがあるんだねえ」
真央「私もまだ、今現実のなかにいるかどうかと……」
久末「そうか」
真央「そうなんです」
久末「溝永君。ところでホームの経営赤字だったね」
真央「えっ?今それ」
久末「このままだと施設の閉鎖。最終的には買収される。太宰君、ちょっと奥の部屋に行っててもらえないかね」
太宰「ああ。邪魔だったか」
   太宰部屋に入る。
真央「何です?」
久末「太宰治のいた時代にはクロルプロマジンという、二十世紀半ば開発された特効薬もなかった。今はクロルプロマジンどころか、非定型という特効薬が開発されている」
真央「はい。知っています」
久末「当時の太宰治さんや夏目漱石さんの患っていた精神分裂病、今でいう統合失調症だ。この病気は今では治る病気と言われ、薬もどんどん開発されている」
真央「はい。そうですね」
久末「ベンゾジアゼピン系の特効薬が開発されたあと、非定型抗精神病薬として、リスパダールやオランザピン、クエチアピンなど。幻聴、妄想などの陽性症状だけでなく、意欲の低下に対して陰性症状の改善も期待される。さらには副作用も少ない」
真央「大学で習いましたし試験にもよく出ますね」
久末「もし彼の、太宰君の病気を治したら、学会にも発表できる。名誉あることだ」
真央「そう上手くいくでしょうか?」