慣れから進歩は生まれない
組織の停滞は、失敗からではなく「慣れ」から始まる。
慣れとは安定の別名だが、同時に思考停止の合図でもある。
人は役職に就いた当初、よく考える。
知らないことを恐れ、現場の声に耳を澄まし、判断に慎重になる。
ところが時間が経つにつれ、経験は自信に変わり、自信はやがて前例になる。
この移行は静かで、本人にはほとんど自覚がない。
判断は速くなる。
しかし問いは減る。
異論は届きにくくなり、違和感は「問題なし」と処理される。
こうして組織は、昨日の成功を今日も繰り返す装置になる。
多くの現場を見てきて思う。
役職が最も機能するのは、就任から二年ほどだ。
一年前半は学習、後半は実行。
緊張感と現場感が同時に存在する、最も鮮度の高い期間である。
三年目以降、能力が落ちるわけではない。
ただ、守りが始まる。
失敗しないことが目的にすり替わり、変える理由が見えなくなる。
ここから先は、進化する人と劣化する人が分かれる。
本当に必要なのは、長く座ることではない。
役割を終えたと判断し、次に譲る勇気だ。
降りることは敗北ではない。
それは自分が組織より大きくならないための、知性ある選択である。
慣れは安心を与えるが、未来は生まない。
進歩はいつも、少しの不安と違和感から始まる。
慣れから進歩は生まれない。
この単純な事実を忘れたとき、組織は静かに老いていく。
作品名:慣れから進歩は生まれない 作家名:タカーシャン



