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オオサカタロウ
オオサカタロウ
novelistID. 20912
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Ink

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 でも、浅尾は違った。わたしがいじめのきっかけについて聞いたとき、完全にその目は逃げていて、認めることはなかった。僕は蟻地獄に入りませんと、宣言したようなものだ。せめて、自分が始めたことだと認めてくれれば。そうではなくて、始めさせられたことだと返し、傷を癒すことだってできた。
 でも、もうそんな機会は訪れない。
 矢野がいじめられるきっかけを作ったのは、浅尾だ。罪悪感に蓋をし続けることは、最も罪深い。それでも、救済のチャンスはある。なぜなら、かつてチャッカマンを持っていた糸田が無気力な少年になってしまったように、悲しみは人を変えるからだ。あるいは周りの悲しみが、人がそのままでいることを許さない。
 どちらにせよ、そういったことは自分自身が死んでしまったら最後、経験することはできない。わたしは、妻のスマートフォンのバナーに表示されているメッセージを見つめた。
『用事終わり。駅ビルにいるから、起きたタイミングで欲しいものがあったら……』
 三時間既読がつかないことを、浅尾はどう思っているだろうか。わたしのように蟻地獄の中にいたら焦るだろうが、今の浅尾なら、単に長い昼寝だと思っているかもしれない。
 わたしはもう一度メッセージを見返した。
『起きたタイミング』
 廊下で目の前に突っ伏している、大きさの違う二人の人間だった物。
 それに対して使うにしては、面白い言葉だ。
作品名:Ink 作家名:オオサカタロウ