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4 エピローグ
またいつもの場所へ三人で来た。
川は相変わらず、何も言わなかった。
三人は並んで立って、長靴の中に水を入れていた。
「……冷てえな」
最初に言ったのは山ちゃんだった。
「お前、去年も同じこと言ってたぞ」
信二が笑う。
「成長してない証拠だな」
歩けるようになった達夫がそう言って、咳き込んだ。
少し間があって、誰も掘らない。
「なあ」
山ちゃんが空を見ながら言う。
「今だったらさ、1グラムでも大騒ぎだよな」
「1グラムあったら老眼鏡買うわ」
信二が言う。
「俺は湿布」
達夫が即答した。
三人、声を出して笑った。
山も川も風も相変わらず、知らん顔だった。
「昔さ」
信二が言う。
「1キロ当てたらどうするって話、したよな」
「したした」
山ちゃんがうなずく。
「俺、世界一周って言った」
「嘘つけ」
達夫が言った。
「お前、焼肉って言ってた」
「しかも食べ放題な」
信二が補足する。
「……正解」
山ちゃんは悔しそうに言った。
少し沈黙。
風が吹いて、水面がきらっとした。
「なあ」
達夫がぽつっと言う。
「結局さ、俺たち、何しに来たんだろうな」
信二は川を見たまま答えた。
「確認じゃねえか」
「何を?」
山ちゃんが聞く。
「まだ笑えるかどうか」
達夫はしばらく黙って、
それから小さく笑った。
「……合格だな」
三人はスコップを置いた。
掘らないまま、引き上げる準備をした。
帰り際、山ちゃんが振り返って言った。
「なあ、また来る?」
信二は即答した。
「来ねえ」
達夫も言った。
「腰がもたん」
三人で顔を見合わせて、
「じゃあ、またな」
と、同時に言った。
川は最後まで、
何もくれなかった。
でも、三人は空っぽの手で、
やけに満ち足りて帰路について行った。



