GOLD
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プロローグ
第一章 「愚者たちの黄金律」
成田空港の朝は、いつも夢と二日酔いの匂いが混ざっている。
出発ロビーの端で、五十歳の達夫はつるはしをケースからはみ出させ、係員に頭を下げていた。
「これは楽器です」
「どのあたりがですか」怪訝な顔で真面目に質問する係員
「人生を奏でます」
係員は無言で別レーンに回した。
達夫は金採掘歴二十年。日本の川という川を掘り尽くし、未だ大当たりはない。
信二は三十代半ば、金採掘歴五年。YouTubeを見て金の魅力に取り憑かれた男だ。
山ちゃんは二十五歳、金採掘歴一年。ヘルメットにGoProを付け、
YouTuberでヒトヤマ当てようと思っての参加だった。
河原で知り合った3人はオーストラリアで発掘された金塊のニュースを知り、
ついノリの勢いでオーストラリア行きを決定した。
「オーストラリアはいいぞ」
達夫は搭乗券を握りしめながら言った。
「20ドルさえ払えば金は誰でも掘れるし、夢がある」
「出ますかね〜、僕たちバカなんじゃないでしょうか?」
信二が真顔で言う。
「うるさい。人生は夢見てなんぼだ」
1 赤い大地と白い看板
オーストラリア メルボルンから一時間
羊の群れを見ながら山ちゃんがレンタカーを走らせる。
バララットの大地は赤く、空はやけに広かった。
風が吹くたび、草が乾いた音を立てる。
「おお……ゴールドラッシュの聖地……」
山ちゃんが感動してカメラを振り回す。
「※ただし許可区域のみ、ってちゃんと撮っとけ」
信二が指差す先には、大きな看板。
《NO PERMIT, NO DIGGING. HEAVY PENALTY》
「罰金いくらでしたっけ」
「最大三十万豪ドル」
「死刑より嫌ですね」
「死刑はない」
達夫は地面に膝をつき、土を握った。
指の隙間から、赤い砂が零れ落ちる。
「匂いがする」
「何のですか」
「夢の」
⸻
プロローグ
第一章 「愚者たちの黄金律」
成田空港の朝は、いつも夢と二日酔いの匂いが混ざっている。
出発ロビーの端で、五十歳の達夫はつるはしをケースからはみ出させ、係員に頭を下げていた。
「これは楽器です」
「どのあたりがですか」怪訝な顔で真面目に質問する係員
「人生を奏でます」
係員は無言で別レーンに回した。
達夫は金採掘歴二十年。日本の川という川を掘り尽くし、未だ大当たりはない。
信二は三十代半ば、金採掘歴五年。YouTubeを見て金の魅力に取り憑かれた男だ。
山ちゃんは二十五歳、金採掘歴一年。ヘルメットにGoProを付け、
YouTuberでヒトヤマ当てようと思っての参加だった。
河原で知り合った3人はオーストラリアで発掘された金塊のニュースを知り、
ついノリの勢いでオーストラリア行きを決定した。
「オーストラリアはいいぞ」
達夫は搭乗券を握りしめながら言った。
「20ドルさえ払えば金は誰でも掘れるし、夢がある」
「出ますかね〜、僕たちバカなんじゃないでしょうか?」
信二が真顔で言う。
「うるさい。人生は夢見てなんぼだ」
1 赤い大地と白い看板
オーストラリア メルボルンから一時間
羊の群れを見ながら山ちゃんがレンタカーを走らせる。
バララットの大地は赤く、空はやけに広かった。
風が吹くたび、草が乾いた音を立てる。
「おお……ゴールドラッシュの聖地……」
山ちゃんが感動してカメラを振り回す。
「※ただし許可区域のみ、ってちゃんと撮っとけ」
信二が指差す先には、大きな看板。
《NO PERMIT, NO DIGGING. HEAVY PENALTY》
「罰金いくらでしたっけ」
「最大三十万豪ドル」
「死刑より嫌ですね」
「死刑はない」
達夫は地面に膝をつき、土を握った。
指の隙間から、赤い砂が零れ落ちる。
「匂いがする」
「何のですか」
「夢の」
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