悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(北部九州)
水場があることを前提に、持参した水をほぼ飲み切っていたので、水場に水を汲みに行ったところ、野営場所からはかなり低い場所で、水を汲んでからはプチ登山になった。疲れた体にはかなり厳しい登りだった。
その夜、シュラフ(寝袋)に入ったものの、疲れていたことと単独行で興奮していたためか、なかなか寝付けず、そうなると、周囲の音に耳をそばだててしまうもので、その時、テントに吹いてくる風はひとつの塊だと知った。先ずは遠い場所の木々が揺れる音が聞こえ、次第にテントに近付き、周囲の木々が揺れて、最後にテントを揺らして去って行く。それは連続せず、幾度となく繰り返した。
延岡からの九州中央自動車道は、まだそれほど西に延びておらず、R218に接続した。そこには道の駅「北方(きたかた)よっちみろ屋」があり、ここまで走り尽くめだったため小休止を取った。
駅舎の建屋は小さく、田舎の道の駅の雰囲気で、朝採れ野菜やこの地域の特産物が並んでいた。観光客相手というよりは、地元の人たち向けの店のような道の駅だった。
「ジル」に戻ってから、1合の無洗米で炊飯準備をした。今日の夕食用だ。
道の駅を後にして、再びR218を走り始めた。
かつて、R218は五ヶ瀬川沿いに走っていたようで、川からずっと高い場所に、そのバイパス(日之影バイパス)が完成してからは、以前の国道は県道に変わったと思われる。
その走りやすいバイパスを暫く走ると、道の駅「青雲橋」が見えてきたが立ち寄らず、先に進むと、再び無料の九州中央自動車道に入った。部分開通しているようで、幾つかのトンネルを抜けると高千穂町に入った。
日本神話によると、ここは天照大神(あまてらす・おおみかみ)の孫のニニギの天孫降臨の地であり、天照大神が籠ったとされる天岩戸(あまのいわと)の天岩戸神社がある。さらには、幻想的な雰囲気が特徴の高千穂峡があるが、大学生の頃、バイクで何度も訪れているので、これら全てをパスした。
阿蘇の南郷谷には、R218から分かれてR325に進むのだが、その分岐点の先に道の駅「高千穂」があったので、立ち寄ることにした。
炊飯準備をして、ちょうど30分が経過したタイミングだったので、炊飯器のスイッチを入れた。
炊飯器はダイネットの後方のキッチンのコンロの横に取り外しできるように固定している。したがって、ひとりで旅をしている時は、「ジル」を停めて、後方のエントランスのドアを開けてステップに上って、炊飯器のスイッチを入れなければならない。ちょっと手間がかかってしまう。
高千穂から九州山地を越えて、阿蘇の南郷谷までは、お気に入りの風景が続いた。
先ずは、宮崎県と熊本県の県境に架かるループ橋の最上部から見えたのは、九州山地北部の山並みで、そこには祖母山や傾山が見えるはずだが、走りながらでは、その手前の前衛峰しか目に入らず、それでも、秀逸な風景だった。
それ以降はなだらかな高原の中の道路になり、牧場や畑、そして杉林が繰り返すおとなしい風景が続いた。
最後は、阿蘇山の「外輪山」の幾つかのトンネルを抜けてからの、助手席側の窓から突然見えたのは阿蘇山の南側に広がる南郷谷の風景で、じっくりと眺めたくなり、路肩に停めようとしたところ、少し先にパーキングが見えたので、そこまで行って駐車した。
西に続く「外輪山」に目をやると、「俵山(たわらやま)」までは見えたが、さらに西側は次第に低くなり「立野火口瀬(たてのかこうせ)」につながるのだが、ここからは見えなかった。
この「俵山」には幾つかの思い出があり、二つほど紹介する。
ひとつ目は、学生の頃に阿蘇山方面にバイクでツーリングに行った時のことだが、ゆったりと飛んでいる3、4機のハンググライダーを見た。「俵山」からテイクオフして、「外輪山」に当たって吹き上がる風に乗っているのだろう。この時の強い印象が、今の私のパラモーターの趣味につながっているのかもしれない。
二つ目は、真冬にひとりで「俵山」に登ったことだ。登頂したものの視界は優れず、20分くらい待っていたがガスは晴れず、諦めて下山し始めた時、いきなり強い風と横殴りの雪が降り始め、山頂直下の岩陰から動けなくなった。その時の気温は手持ちの温度計で、なんとマイナス20度だった。風が止むまで待つしかなかったが、色々と思いを巡らしながら30分ほど待ち、風と雪が止んだので、下山することができた。
今度は正面の阿蘇山に目をやると、阿蘇五岳(あそごがく)で最も高い「高岳(たかだけ:1592m(覚え方は、肥後の国の「ひごくに」))」は雲の中で、その西側にある「中岳」も雲の中、噴煙もよく分からなかった。「高岳」の手前の日ノ尾峠(ひのをとうげ)の鞍部から続く「根子岳(ねこだけ)」は、阿蘇五岳の中で最も険しく、そのギザギザしている山容が見て取れた。
この南郷谷の田園風景と阿蘇の山々の思い出に包まれていると、「熊本に戻って来たなあ」という感情が湧いてきた。その気持ちを味わいながら、もう暫くの間、ここからの景色を見続けた。
「外輪山」をジグザグに下り終えてから、南郷谷の幹線道路のR325に入った。そこは、南郷谷の中央を流れる白川(しらかわ)の北側で、今日のゴールの道の駅「あそ望の郷くぎの」は白川の南側の県道沿いにあり、白川を渡って、そこに向かった。
走りながら、ふと思ったのは、この道の駅は国道沿いではなく、何故、交通量の少ない県道沿いにあるのかということだった。
「外輪山」の展望台から、時間を忘れて風景を堪能していたことで、道の駅に到着したのは午後5時を過ぎていた。そのため、駅舎も併設されたショップなども全て閉店していて、賑わいはなく閑散としていた。
この道の駅は、県道から白川に下る斜面にあり、そのため駐車場は上下2段に分かれていて、駅舎が建っているのは下の駐車場の横で、そこに駐車しているクルマの台数は少なく、多分、車中泊するのだろう。それらから少し離れた場所に「ジル」を停めた。
上下の駐車場を見渡すと、長距離トラックなどの大型車両は停まっておらず、ミニバンとセダンばかりで、キャブコンは私の「ジル」1台だけだった。
ハイエースの中でベッドメイクしているドライバーがいて、その横には125ccのオフロードのバイクが積まれていた。ガソリン臭い中での車中泊は、彼に取っては幸せな空間なのだろう。
駅舎の中央のテラスを歩いてゆくと、広大な芝生の広場に面した広いウッドデッキがあり、そこから、阿蘇山の全景の展望が広がっていた。既に暗くなりつつある今、芝生の中の電飾が美しかった。
ここには、この広大な風景があるため、道の駅は県道沿いに建てられた気がした。それに、パターゴルフなどがあり、mont・bell(モンベル)のショップなどを併設し、さらには広い駐車場を含む広大なエリアの準備が出来たのも、その理由なのだろう。
夕食は「おでん定食」だ。炊飯したご飯に、スーパーで買った袋入りのおでんを鍋に移して温め、インスタント味噌汁だ。テレビを見ながら食べて、食後のデザートは干し柿とみかん、最後にコーヒーを飲んで腹八分目。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(北部九州) 作家名:静岡のとみちゃん



