旅エッセイー北海道1 自然満喫道東の旅
海岸沿いにさらに走り厚岸霧多布岬へ。海には昆布が多く磯臭さが漂う。岬からはるか下の海を見下ろすと昆布の海に揺蕩うラッコが数匹、潜ったり浮かんだりしていた。水族館以外の野生のラッコを生で見られるとは思わなかった。名前通り霧が多かったりするらしくラッコが見られたのはラッキーだったようだ。
厚岸から釧路へ向かう途中、道の駅コンキリエで牡蠣天丼を食べる。天丼に大きな浅利?の味噌汁、沢庵、海藻で作った麺みたいなにゅるにゅるした総菜がついてなかなか美味。
釧路に到着。釧路川沿いにはフィッシャーマンズワーフの大きな建物があり、居酒屋や海鮮市場のようなお店もたくさんあってなかなか都会。アニメ「邪神ちゃんドロップキック」の聖地らしくポスターなどがある。後にアニメを見たらここの海鮮市場で邪神ちゃんが食い逃げするシーンがあり、まわりの様子がかなり忠実に描かれていた。
夕暮れ時、晴れていれば釧路川にかかる幣舞橋から海方面に夕日が見えて映えるらしいが、曇っていてダメ。やむなく夜の散歩にでる。夜はワーフ周辺や幣舞橋がライトアップされこれはこれで美しい。
いよいよ海を離れ内陸部へ向かって北上。釧路湿原を経て阿寒湖を目指す。天気は相変わらずの曇り。釧路湿原国立公園では展望台に上るが遠景はどんよりとかすむ。まあ曇っているくらいのほうが湿原らしくていいのか。緑の中をうねうねと流れる川。似たような景色が延々と続く。この感じ、昔ソヴィエトへの旅行でハバロフスクからタシケントへの国内線の霜が着く窓から見下ろしたシベリアのようだ。あの時は晴れていたので湿原を蛇行する河がキラキラと輝いていた。
阿寒に近づくと次第に晴れてきた。人っ子一人いないまっすぐな道がつづく気持ちのよいドライブ。高速でもないのに高速並みのスピードを出している。ネズミ捕りも検問もないがそもそも速度制限の交通標識もでていないからいいのか。まあそこそこスピードを出さないとその日のうちに目的地にたどり着けない気もする。
と、気持ちよく走って阿寒湖に着くとまた曇ってしまった。冬はかなり雪が積もるのだろう。ここまでが道路だよ、と示すためのものであろう信号くらいの高さの下向きの赤白矢印が道路沿いに並んでいる。ちなみに北海道の道路は除雪した雪を捨てるためなのか、道路の両脇は溝になっている。側溝というようなものではなく、水路といっていいくらいの幅と深さなので、間違って落ちたら大変。ちなみに、明治期に開拓した当時、ロシアの脅威に焦って急ピッチで道を作るため、いわゆるタコ部屋状態で囚人をこき使い、犠牲者がでても側溝に捨てていったとかなんとか。この溝がそうなのか。後でちゃんと供養されたと思いたい。
阿寒湖ではワカサギ天丼を賞味。駐車できたのでアイヌコタンに寄る。ここは観光地ではあるけれど、本当のアイヌの人々が実際に暮らす場所。厳しい生活を強いられてきたアイヌ民族の生活を守るため園主が私有地を無償で貸与し、北海道各地のアイヌ民族が移住したことで発展したそうな。敷地内には、民芸品店・飲食店などの店舗やアイヌ文化専用の屋内劇場、博物館や工芸品を収蔵したギャラリーといった施設が充実し、アイヌの歴史と文化を学べる。
旅立つ前にちょうどテレビで「アイヌモシリ」の映画を見たのだが、(残念ながら夫は見なかったので面白さ半減だろう)このアイヌコタンで、ここに住む人が演じている映画だった。つまりロケ地そのものに来ていることになる。気づけば映画に出演していたデボさん本人が店番をしている。ちょっと寄って見たかったが再び見たときにはご本人は奥に引っ込んでしまっていた。夫は木彫りの店でコロボックルなど買っていたのだが、買い物が済むと先を急ぐから、とそそくさとコタンから立ち去ってしまった。私も民芸店などをじっくり物色したかったのだが残念。
摩周湖に着く。曇りではあるが時折雲の合間に青空が見える。よく霧の摩周湖と言うけれど、湖に霧はなく、わずかに太陽が顔をだすとコバルトブルーの湖面を背景に、木々の幹や枝の白、陽光に照らされた葉の鮮やかなライトグリーンのコントラストが非常に美しい。周辺には船も人も鳥すらもいない。蒼くたたずむ摩周湖があるだけ。まさに一服の絵画のよう。
摩周湖と屈斜路湖の間にある硫黄山へ。文字通り至る所で硫黄が噴出している山。そこらじゅうの岩が硫黄で蛍光イエローに染まり、周囲はもくもくと蒸気が上がっている。こういう場所は箱根やら草津やら雲仙やら那須の殺生石やら、なんとか地獄、といった名前がついて日本の温泉地にはよくあるが、ここは規模が違う。危険エリアの簡単な柵はあるが、柵に沿う道でも小規模にけっこうボコボコと硫黄が噴き出している。よくある説明の看板などなく、自然のままに散策を楽しめということらしい。おかげで全身が硫黄臭くなってしまった。
屈斜路湖には寄らないので美幌峠から湖を見る。足元にはネモフィラの様な紫のきれいな花(グーグルによれば「チシマフウロ」らしい)やピンクの金魚草みたいな花(タカネシオガマというらしい)が咲き誇っている。高山植物のようだ。
夕方ちかくに網走市に到着。夕日が網走湖に照り映えている。道東は大きな湖が多い。夕食を買いにスーパーに寄ってから宿に落ち着く。
翌日、この旅で最も好天になったので早朝から活動開始し、サロマ湖へ向かった。自転車を借り、海を右手に見ながら湖沿いにサイクリング。サロマ湖と海の境目が途切れて繋がっているところまで行ってみる。快晴の空、両側に水、という景色を見ながらの往復4.5キロ。人がほとんどおらず朝の空気が気持ちよい。
再び車で網走に戻り、有名な網走刑務所へ。もちろん博物館になっており、漫画「ゴールデンカムイ」にも登場する。日露戦争後の北海道でアイヌの金塊を巡りあれこれするこの作品は、アクションもさることながらアイヌの少女の村での暮らしの描写などリアリティがあって面白く、アニメや映画にもなり北海道では今絶賛応援中でスタンプラリーなどもやっている。案の定売店には「ゴールデンクッキー」やら「脱獄王」やら「食べていいオソマ」やら「アシ?パさんのアザラシカレー」など、タイアップ商品が並んでいた。原画やサインの展示などもある。アニオタな私はけっこう興味あったのだが、夫はこの作品を知らないので残念。付属の食堂で「監獄食b」というホッケ定食950円を食べる。焼いたホッケに冷奴、きゃらぶき、味噌汁がついて、食器がプラスチックなのとごはんが麦飯という以外、いたって普通のまっとうな定食である。カレーやロコモコ丼などもあった。
網走を後に、女満別空港へ向かう。今日は晴天なので再びメルヘンの丘で写真を取る。初日よりは見栄えのする写真になった。
道東の旅、テーマは自然満喫かな。
作品名:旅エッセイー北海道1 自然満喫道東の旅 作家名:鈴木りん



