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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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令和の心の取扱説明書

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「折れない強さ」に
すり替えた。



真面目な人は、
限界まで我慢する。

まだ大丈夫。
もう少し。
自分さえ耐えれば。

その結果、
ある日突然
動けなくなる。

それは
弱さではない。

設計超過である。



真面目すぎる社会では、
休む理由が必要になる。
• 体調不良
• 診断
• 正当な証明

だが本来、
休むのに
理由はいらない。

疲れたから休む。
それだけでいい。



真面目な人が
壊れやすいのは、
心が弱いからではない。

社会が、
逃げ道を用意していないからだ。



令和に必要なのは、
「真面目をやめること」ではない。

真面目の濃度を下げることだ。
• 7割で許す
• 途中でやめる
• 間に合わなくても笑う

それだけで、
心は持続可能になる。



真面目である前に、
人間であれ。

その順番を
取り戻すことが、
今の社会には
必要だ。



心は直すものではなく、扱い直すもの

心の調子が悪いとき、
人はまず
「直そう」とする。

前向きになろう。
弱音をやめよう。
もっと強くなろう。

だが、
心は機械ではない。

壊れた部品を
交換すれば
元に戻るものではない。



心は、
もともと
不安定にできている。

揺れる。
偏る。
疲れる。
飽きる。

それは
欠陥ではない。

仕様である。



不具合が出るたびに
自分を疑うと、
心は
居場所を失う。

「またダメになった」
「まだ治っていない」

そうやって
直そうとすればするほど、
心は
頑なになる。



心を
直そうとする姿勢は、
無意識に
「今の自分は間違っている」
という前提を作る。

この前提が、
一番の負荷だ。



では、
どうすればいいのか。

答えは
単純だ。

扱い直す。



心は、
天気に似ている。

晴れる日もあれば、
雨の日もある。

雨の日に
「晴れろ」と怒っても、
空は変わらない。

傘をさす。
予定を変える。
それだけでいい。



心も同じだ。

元気な日は
前に出る。
沈む日は
引っ込む。

無理に
平均を取らなくていい。



扱い直すとは、
状態に合わせて
選択を変えることだ。
• 疲れているなら、減らす
• 迷っているなら、止まる
• イライラしているなら、距離を取る

それは
逃げではない。

調整である。



多くの人は、
「こうあるべき心」を
持ちすぎている。
• いつも前向き
• 折れない
• 動じない

だが、
そんな心を
人は持っていない。



心は
使い続けるほど
癖が出る。

だからこそ、
メンテナンスではなく
取り扱い説明書が必要だった。



心を
正そうとしなくていい。

理解し、
工夫し、
距離を調整する。

それだけで、
人は
ちゃんと生きられる。



心は
直るかどうかではない。

今日、どう扱うかだ。




やめる勇気、飽きる才能

やめることは、
悪いことだと教えられてきた。

続けなさい。
我慢しなさい。
石の上にも三年。

途中でやめる人は、
根性がない。
飽きっぽい。
信用できない。

そんな空気の中で、
多くの人が
無理を続けている。



だが、
人は
続けるために
生きているのではない。

生きるために、
選び直す。

それだけの話だ。



人の心は、
一定ではない。

興味も、
体力も、
役割も、
時間とともに変わる。

それなのに、
同じ場所、
同じやり方、
同じ自分を
保ち続けろというのは、
無理がある。



飽きるという感覚は、
劣化ではない。

更新の合図だ。



子どもは、
飽きるのが早い。

だがそれは、
集中力がないからではない。

吸収が終わったからだ。

必要な分だけ
受け取ったら、
次へ行く。

この切り替えは、
本来
とても自然なものだった。



大人になるにつれ、
人は
飽きを隠すようになる。
• ここでやめたら迷惑
• 今さら変えられない
• 自分が我慢すればいい

こうして、
心は
静かに摩耗していく。



やめる勇気とは、
逃げる強さではない。

続けないという選択を
自分に許す力だ。



本当に怖いのは、
やめることではない。

飽きているのに、
続けることだ。

そこには、
喜びも、
成長も、
意味も
残らない。



やめることは、
断絶ではない。

区切りである。

一度、置く。
距離を取る。
形を変える。

完全に捨てなくていい。



令和は、
「一生同じ」を
前提にしない時代だ。
• 仕事を変えていい
• 居場所を変えていい
• 人間関係を変えていい

それは
不安定ではない。

柔軟だ。



飽きる才能を持つ人ほど、
変化に気づく。

変化に気づく人ほど、
壊れる前に離れられる。



やめることは、
負けではない。

生き延びるための判断だ。



何かを
やめたいと思っているなら、
それは
弱さではない。

あなたの心が
「次」を
指しているだけだ。




人間を人間に戻す時代

令和という時代は、
新しい何かを
足すために
始まったのではない。

戻るために
始まった。



人はいつから、
こんなにも
自分を管理するように
なったのだろう。

感情を抑え、
予定を埋め、
成果で自分を測る。

それは
進化ではない。

過剰適応だ。



人間は、
もっと
曖昧で、
揺れて、
雑だった。

その雑さが、
工夫を生み、
笑いを生み、
関係を生んだ。



だらけていい。
迷っていい。
遅れていい。
忘れていい。

それでも、
人は
ちゃんと生きてきた。



現代社会は、
人を
「役割」に
変えてしまった。
• 生産性
• 評価
• 数字
• 正しさ

それらは
必要だ。

だが、
それだけでは
人は
生きられない。



人間を人間に戻すとは、
能力を下げることではない。

感覚を取り戻すことだ。
• 疲れたら休む
• 違和感に気づく
• つまらなかったら離れる
• 面白かったら続ける

それだけでいい。



心は、
管理対象ではない。

共に暮らす存在だ。

命令ではなく、
対話が必要だった。



令和に必要なのは、
強い人ではない。

ゆるめられる人だ。

力を抜ける人。
間を作れる人。
余白を残せる人。



これからの社会は、
早い人より、
戻れる人が
生き残る。

頑張れる人より、
やめられる人が
壊れない。



人間を
機械に近づける時代は
終わった。

これからは、
人間を
人間に戻す時代だ。



心は、
直すものではなかった。

扱い、
緩め、
選び直しながら
一緒に生きるものだった。



この
『令和の心の取扱説明書』は、
あなたを
変えるための本ではない。

戻すための言葉だ。