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凄惨な事件のたびに語られる「理解不能」「人間のやることではない」という言葉。
しかしその瞬間、私たちは思考を止め、問いを手放してはいないだろうか。

本稿は、人間の常識を逸した悪事を、生物学と社会倫理の交差点から捉え直す試みである。
悪を個人の異常性として切り捨てるのではなく、
抑制が壊れ、関係が断たれ、「存在」が痩せていく社会の構造に光を当てる。

罰よりも前に、何が枯れたのかを問う。
それは、悪を許すためではなく、悪を生まない社会を考えるための倫理である。