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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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朽ちた聖域 Ⅳ真の聖域へ

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真の聖域へ


大恩音楽大学教授・寺田啓文(てらだ ひろふみ)の教員室 ――

「寺田先生、先生は、この大学の近くにある廃教会のことを知っていますか」
「…それはもしかして、あの木立の中にある教会のことかな?」
「はい、そうです」
 濱内が答えると、寺田先生は両眼を一瞬閉じて、ゆっくりと話し始めた。
「記憶にはないけど、僕はあの教会で洗礼を受けたらしい。でも、そのあとのことは覚えていないんだ」
「ええっ、先生が!?」
 亜美は驚きのあまり身を乗り出した。
「ただ、ずっとあとになってから、あの教会は資金難で閉鎖して、所属していた信徒たちが集団で転籍したというのを、風の便りに聞いたね」
 寺田先生の話を聞いた亜美と濱内は、互いの顔を見ながら、
(いや、閉鎖した理由はほかにもあるはず…)
 と思っていた。

「あの、先生、プライベートなことを聞きますが、洗礼式のときの写真は残ってますか」
「写真かぁ…。あるかもしれない。でも、何でそんな質問をしてくるの?」
 答えに困った亜美に代わり、濱内が答えた。
「いや、50年ほど昔にその教会に所属していた、一人の青年について、知りたいんです」
「一人の青年…?」
 亜美と濱内がうなずいた。寺田先生は考え込んだ顔をすると、こう言い出した。
「事情は何だかよく分からないけど、とにかく洗礼式の写真があったら、明日持ってくるよ」
 先生の答えを聞いて、学生たちはかすかに笑みを浮かべた。