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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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朽ちた聖域 Ⅱ廃教会でのセッション

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やがて亜美と濱内は、人気のない木立の中に建つ教会の前に誰かが立っているのを見て歩みを速めた。
「よっ」
 白いシャツに黒い薄手のジャケット、そして黒いズボンといったシンプルな服装の杉内先輩は、右手を軽く上げた。
「杉内先輩!」
「久しぶりだねアミティ、濱くん」
「お久しぶりです、先輩」
 後輩たちは声をそろえて挨拶した。
「お元気でしたか」
「うん、いつものとおりだよ」
 亜美は濱内の横で少し硬い微笑みを浮かべていると、水色の半袖シャツとインディゴのジーンズを着用した、穏やかな感じの男性の姿を目にした。
「杉内先輩、隣の方、どなたですか?」
「あぁ、彼は俺の知り合いで、伊藤明さん。作曲家志望なんだ」
「へえ~」
 亜美と濱内は、尊敬するような眼差しを伊藤さんに向けた。
「伊藤さん、こちらは俺の後輩の野口亜美さんと、同じく後輩の濱内隆司くんだ」
「えっと、今紹介されました野口亜美です」
「濱内隆司です」
 伊藤さんは手を差し出すと、亜美と濱内それぞれと握手をした。
「今日はどうぞよろしく」
「よろしくお願いします」

 伊藤さんは建物にちらりと目を向けると、亜美たちのほうを見た。
「古い教会だろう?音がよく響くと聞いてね」
「そうなんだよ。俺も伊藤さんも、一時期この教会にこもって曲を練習してたんだ」
 そう話す杉内先輩の横で、伊藤さんは首を縦に動かした。
「マイクテストも兼ねて、みんなで合わせてみよう」
 杉内先輩は微笑んだ。しかし、その笑顔の奥に、どこか緊張の影が見えた。