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タカーシャン
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novelistID. 70952
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農家は苦しく、JAは豊か ― 土と資本のねじれた関係

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農家は苦しく、JAは豊か ― 土と資本のねじれた関係

いま、日本の農業現場では静かな矛盾が進行している。
農家の所得は伸び悩み、後継者は減り続け、耕作放棄地が広がる。
一方、地域の中心街に目を向ければ、JAの立派な高層ビルがそびえ立つ。
同じ「農業」という旗のもとにあるはずの両者の姿は、どうしてこれほどまでに対照的なのか。

この矛盾の根は深い。
かつてJA(農業協同組合)は、戦後日本の復興と食料自給を支えた存在だった。
小規模農家を束ね、共同で肥料を仕入れ、米を出荷し、互いに助け合う“共助の組織”であった。
だが、高度経済成長とともに、農業よりも金融・保険・流通といった「非農業部門」へと軸足を移していく。
そこから「協同組合から企業体への変質」が始まった。

現在のJAは、貯金・共済・ローンを中心とした巨大金融機構でもある。
農家の預金や保険料、融資の利息がJAグループの経営を支える。
一方、農家の収益は年々下がり、補助金と高齢者年金が生活の基盤となる。
つまり、JAの安定は農家の不安の上に成り立っているという逆転構造だ。

JAが高層ビルを建てるとき、そこには「地域経済の象徴」という建前がある。
だが、その陰で、現場の農家が老朽化したビニールハウスを修理できず、後継者が夢を失っている現実がある。
農協の建物が立派になるほど、土の現場との距離は広がっていく。
かつて“泥のにおい”を誇りとしていた組織が、いまや“スーツの匂い”をまとい始めた。

もちろん、JAの職員や経営陣がすべて悪いわけではない。
制度の問題なのだ。
JAは「協同組合」であると同時に、「株式会社的経営」を求められるという二重構造に陥っている。
農家の利益とJAの利益が、もはや同一線上にない。
それが「農業組織の皮をかぶった金融集団」という批判を生む。

では、どうすればよいのか。
単純な「JA批判」では解決しない。
求められるのは、農業の公共性を再定義することだ。
農業は単なる産業ではなく、地域の文化であり、食の安全保障であり、地球環境の基盤である。
JAはその“文化と生命の共有装置”として生まれた。
ならば、金融利益ではなく、農の持続と地域の誇りを最優先する仕組みへ立ち戻るべきだ。

農家が安心して汗を流せる社会とは、
ビルの高さでなく、土の厚みで測られる国のことだ。
いま必要なのは、組織の再編ではなく、価値観の再編である。
「儲かる農業」よりも、「続く農業」を。
JAが再び、農民と同じ目線に立つ日が来るかどうか。
その問いは、私たち消費者一人ひとりにも向けられている。