あの人、病んでるよね —— 何を病んでいるのか
「あの人、ちょっと病んでるよね。」
そんな言葉を耳にすることがある。
だが、人が「病む」とは、心のどこかが何かに押しつぶされている状態のことだ。
それは単に“弱っている”のではなく、真剣に何かを抱えている証でもある。
人間関係を病む人がいる。
周囲に合わせるうちに、自分の意見や気持ちを置き去りにしてしまう。
「なんでもいい」が口ぐせになり、自分を失っていく。
過去を病む人もいる。
あの時の選択、あの別れ。
時間は流れても、心の奥で止まったままの時計がある。
未来を病む人もいる。
「どうせうまくいかない」と思い込んでしまい、
動く前から自分にブレーキをかけてしまう。
不安という名の影が、前に進む力を奪う。
孤独を病む人も少なくない。
笑顔の裏で、誰にも見つけてもらえない痛みを抱えている。
本当は「助けて」と言いたいのに、「大丈夫」と言ってしまう。
そして、愛を病む人もいる。
「誰かに必要とされたい」と願うあまり、自分をすり減らしてしまう。
「嫌われたくない」は、本当は「愛されたい」の裏返しだ。
こうして見ると、人は誰もが何かを病んでいる。
しかし、それは決して悪いことではない。
病んでいる場所は、かつて大切にしていた場所でもある。
人を想い、真剣に生きてきた証拠だ。
もし身近な誰かに「病んでる」と感じたときは、
批判や距離ではなく、静かな関心とまなざしを。
その小さな優しさが、心の闇に灯をともすかもしれない。
作品名:あの人、病んでるよね —— 何を病んでいるのか 作家名:タカーシャン