更新日時:2025-10-03 16:36:37
投稿日時:2025-10-03 16:30:47
すり抜ける美と幻としての美
作者: タカーシャン
カテゴリー :随筆・エッセイ
総ページ数:1ページ [完結]
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著者の作品紹介
街を行き交う人の流れの中、ふと一人の姿が目に触れる。「あれ、今の人は……?」気づいた時にはもう遠く、残されるのは一瞬の光の余韻だけ。美しさとは、長くとどまらない。むしろ、すり抜ける一瞬の中にこそ最も強く宿るのかもしれない。視界をすり抜けたその人は、やがて「幻としての美」となる。輪郭はおぼろげに溶け、表情の記憶も曖昧になる。けれども曖昧さこそ、心にとっての余白となり、私たちはそこに自分の理想を描き込む。美しいとは、実体ではなく「私がそう思いたい」という祈りのような感情だ。だから幻のままに留められるとき、美はかえって純度を増していく。やがてその幻は「記憶に宿る美」となり、時間を超えて生き続ける。細部を忘れても、消えない存在感だけが心を支える。記憶は現実を浄化し、儚い一瞬を永遠に変えてしまうのだ。真実はただ――通り過ぎた誰かが、日常を生きる一人の人にすぎないということ。けれど私たちはその事実を超えて、幻としての美を信じようとする。なぜなら、美の真実とは、現実そのものではなく、記憶の中で光り続ける「幻の永遠」だから。
すり抜けた美しさは、もう戻らない。しかし、その一瞬が残した光は、私たちの心の奥で、消えることなく揺らめいている。
すり抜けた美しさは、もう戻らない。しかし、その一瞬が残した光は、私たちの心の奥で、消えることなく揺らめいている。