新世界
その4
たまたま娘は帰郷していて二週間ほど過ごし仕事に戻ろうかという時期だったので、私は彼女と一緒について神戸に行くことになった。
医師の口から癌だったらどうします?という言葉が気になり無理をしてでもきちんと診察してもらいたいという思いと、車で寝ていたらどう?という娘の誘いが後押しした。
長旅は腰痛のことが心配でとても神戸までは行けないと、これまでの日常の身体状況からして思っていた。
早速娘は後部座席を倒して長座布団など重ね、足元には段ボールを置いて足置きも作っていた。乗ってみると実に快適で寝心地もいい。
これなら楽に行けるねと、本気で行く気になり忘れ物のないように準備をした。
翌日の朝、涼しい内に家を出たら四時間半で着くころはそれほど暑くはないだろうと出発は五時、玄関を出るときセコムをセットして車に乗り込んだ。