核廃絶と差別の根っこ
ある日のこと、電車の中で小さな子どもが隣に座った人を見て、少し不思議そうに言った。
「この人、ぼくとちがうね。」
母親は笑って、「そうだね、ちがうってすてきなことだよ」と答えた。
その光景を見て、胸が温かくなった。
けれど同時に、心の奥にある痛みも思い出した。
学校で、地域で、職場で、違いを理由に人をからかう声や、排除する態度を何度も目にしてきたからだ。
違いは本来、美しいもののはずなのに、恐怖や不安にからむと、差別へと変わってしまう。
核兵器もまた、同じ構造の上に立っているのではないだろうか。
「相手が怖いから、自分も持たなければならない」
「力で優位に立たなければ、安心できない」
そうして互いに不信を積み重ねるうちに、世界はますます危険になっていく。
差別は人の心を蝕み、核兵器は地球そのものを脅かす。
けれど両方とも、出発点は「相手を信じられない」という一点に収れんする。
だからこそ、解決の道も共通しているのだと思う。
それは「違いを受け入れる勇気」だ。
違いを怖がるのではなく、共に生きる力へと変えていくこと。
信頼は一朝一夕には生まれないけれど、日常の中の小さな選択から育っていく。
電車の中の母と子の会話。
そのやわらかな視線の中に、核廃絶と差別撤廃の未来が、たしかに芽吹いていた。
作品名:核廃絶と差別の根っこ 作家名:タカーシャン