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記憶喪失の正体

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 そして、岸田と沢村、二人にはそれぞれに、秘密を抱え込んだうえでの、
「故意による記憶喪失」
 だったのだ。
 佐々木博士は最初から分かっていた。
 実際の紹介状には、そこまでのことは書かれていなかったが、二人の間に秘密の暗号があり、さらには、以前から、お互いに秘密の会話がもたれていた。
 携帯電話や、ネットではバレると思い、逆に、固定電話を使った。
 しかも、片方からは、公衆電話を使うことで、相手を欺いたのだ。
 それだけ、
「国家的な研究をしていた」
 ということで、実は、鈴村教授の方も、
「引退した」
 と言いながら、彼は彼なりに研究を進めていて、ある意味、
「佐々木博士との共同研究であった」
 鈴村教授は、
「わしは、研究ができればそれでいい、名声も金もいらない」
 という無欲なことであったが、研究が成功すれば、佐々木博士は、惜しげもなく、鈴村教授の名前を出そうと思っていたのだ。
 今回の、研究においては、前述のような、
「生態系」
 であったり、
「自然界の摂理」
 というものから、世界を救うということと、
「難病を少しでもなくすため」
 ということで、
「難病を発見しながら、その都度それを壊滅させるために、行う手順の研究」
 というものを進めていた。
 それを、沢村と、岸田の二人の頭の中に埋め込んで、それを記憶喪失の治療という形で、鈴村病院から送り込まれたのだ。
 ただ、実際には、その研究というのは、今回の状況において、どうしようもないというのが、鈴村教授の結論のようで、どう解釈すればいいのか、佐々木博士は、考えこんでしまったのだった。

                 大団円

 一つ気になったのが、岸田の様子だった。
 記憶が戻ったのか、元々は、
「こんなに明るい性格だったのか?」
 ということであったが、実際には、
「悪いところ」
 というのが多かった。
 教授とすれば、
「記憶が戻れば、このような悪い性格を、まるで佐々木博士にゆだねたかのような感じ」
 ということであり、この男の何が悪いのかというと、
「自分のまわりに守らなければいけない」
 という人がたくさんいるのに、その人たちを放っておいて、
「ポンと他の人に寄付をする」
 ということであった。
 しかも、この男が寄付をした金というのは、
「慈善事業をする」
 ということで、まわりから集めた金だった。
 今でいえば、
「クラウドファンディング」
 というものなのだろうが、当時はそんなものがなかった。
 そもそも、バブル経済が崩壊する前だったことから、集まった金だったのだろうが、要するに、それが集まったのは、
「父親の人徳によるものだった」
 といってもいい。
 父親が政治家」
 ということだったので、
「それを大っぴらに父親の下に寄付をする」
 ということにしてしまうと、
「政治規正法違反」
 ということになり、もし、有罪にならなくとも、政治家としての信用は地に落ちてしまう。
 父親自身は、
「清廉実直な人だ」
 ということなので、このようなことは、
「後援会」
 などが仕組んだことで、そこに、息子の岸田が絡んだのだった。
 最初は、善の気持ちからだったのかも知れないが、しょせん、
「器が小さい」
 ということで、金を見ると、気持ちが変わってしまい、そもそも、悪知恵が働くということで、
「どうせ、表には出せない金」
 ということで、やつは、
「悪に手を染めた」
 それでも、何とか父親が気づいて、事なきを得たのだが、
「これではまずい」
 ということで、岸田を、鈴村教授に預けたのだ。
 教授の方も、
「こいつは、相当な重症だ」
 ということで、とにかく、
「記憶喪失にする」
 という秘伝の薬を使い、彼を一時的な記憶喪失にした。
 もちろん、
「解毒」
 というのもできるようになっていて、それは、佐々木博士も同じだった。
 そして、似たようなところがある、
「沢村」
 という二人を抱き込んで、今回の研究に充てるのだった。
 そこで、佐々木博士の下にやってきた二人は、記憶を取り戻させたことで、佐々木博士は、筋村教授の真意を知った。
「そうか、それじゃあ、しょうがないか」
 ということをつぶやいた、
 沢村と岸田の二人は、まったく二人の教授い操られているという意識はなかった。
「二人とも、よく来てくれた。私は、鈴村教授を師と仰いでいるものなので、安心してここにいればいい」
 と二人を安心させた。
 二人は、そのまま、研究室での研究の助手をすることになった。
「鈴村病院」
 でも同じように助手をしていたのだが、その時は病院で、こちらでは、研究室なので勝手が違うということであろうが、
「二人はおかまいなし」
 ということだった。
 というのが、二人の開発した薬のおかげということで、鈴村と佐々木の二人の教授に操られながら、
「社会貢献」
 というものをしているのであった。
 佐々木博士は、鈴村教授の考えとして、
「今の時代ではまだ、何もできないので、いずれ世紀末くらいになると、できるはずだ」
 といyことであった。
 というのは、
「佐々木博士が考えた二つの研究を、鈴村教授が考えたのだが、その考えを成功に導くには、まだ開発されていない薬が必要だ」
 というのだ。
 その研究は、世紀末くらいに完成予定ということで、これは、海外の研究施設が行っていることであった。
 ここは、国家ぐるみの開発なので、よほどのことがない限り、遅れるということはないという。
 今までの実績を考えてもそうだから、とりあえず、
「それを待つことにすればいい」
 ただ、一つの問題ということで、
「今、不治の病で苦しんでいる人をどうするか?」
 ということが問題であったが、それを解決するため、教授の推進は、
「冷凍保存」
 というものであった、
「今のままでは、余命が決まっている」
 ということで、冷凍保存するしかないということであったが、
「その間の記憶をどうするか?」
 ということで考えられたのが、
「岸田に使った記憶喪失の薬」
 というものであった。
 この薬は実は、今までに使ったものとは違う。今までの薬というのは、
「沢村」
 に使われたもので、
「その比較」
 という考え方から、鈴村教授は、わざと、
「沢村」
 と、
「岸田」
 の二人を送り込んだのだ。
 そして、
「実験台になった岸田」
 であるが、これは、父親の承諾を受けてのことだった。
「それだけの罪を犯したのだから、もし、実験台となって取り返しがつかなくなっても、それは仕方がない」
 ということであった。
「いや、もしそうなれば、未来においての難病を克服するという中に、岸田君を治すという使命を最優先にすればいい」
 ということからの、出発だった。
 そこから始まったことであったが、世紀末では、確かに、
「待ちに待った薬」
 というのが開発され、当時の佐々木博士と、鈴村教授の念願は、想定していたところまでは解決した。
 そして、その時を最後に本当に佐々木博士と鈴村教授は、引退し、その二人の意思を、
「沢村教授と、岸田教授が受け継いだ」
 ということになったのだ。
作品名:記憶喪失の正体 作家名:森本晃次