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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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大いなる談話

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誰もがもう、“意味”と“沈黙”を“人の一生”の中で“明晰判明な事象”として、同列に並べ始めていた。彼らの中で、分けてもイマヌエルが強く疲労を感じていたには違いないが、彼は次第に“沈黙”を理解し、そこへ身を置こうかと考えた。その時、イマヌエルの中に新たな想念が沸き上がったのだ。

彼は珍しく速足で歩き、対立していたプラトンの元へ立ち戻る。プラトンは宴席で甘い酒に酔っていた。

イマヌエルは乱暴ではなかったが、その目は大きく見開かれ光り、両手はプラトンの席へ突き立てられた。プラトンは一瞬それを見て、イマヌエルが絶望したのかと思ったのだ。

「プラトン先生…私は、“沈黙”が語る、“在る”や、“持続する時間”により内包された、意味ではない“生”、そして、それらにより姿を変えて表現されていた貴方の“イデア”にとって、好機が訪れたのではないかと喜んでいます。知性の満たされる喜びです。これはもしくは、地上の彼女について皆の語っていた事が、そっくりそのまま答えとなっていたのではないかという、喜びです」

イマヌエルに追いついたルネは、もうすっかりその言葉で元気を取り戻し、大きく胸に息を吸った。

「それは正に、我々の精神が想定していた範囲を超えた、知覚の“驚き”だよ、カント!」

エピクロスはそれに、「良かったじゃないかね、イマヌエル君。どうやら地獄ではないらしいな」と言った。彼はずっとテーブルで無花果を食みながら、赤ワインを飲んでいた。

アリストテレスも「我々が哲学者である限り、この感覚的確信の正体を、体系的に精査せねばなるまい」と言い、彼の前には羊皮紙と羽ペン、インクがぽかっと現れた。

プラトンは静かにグラスを置いて目を閉じ、沈黙する。そこへまた激しい炎が燃え盛った。

「これこそ流転の本質だ!かつての“今”が、再び戻らぬ“今”として流れるのだ!」


宴席は歓喜したヘラクレイトスに引っ掻き回されたが、イマヌエルは初めて、“この宴に来て良かった”と感じていた。ルネはまだ盛んに語っており、アリストテレスがそれを書き留める前にソクラテスが問い直して、アンリが別の視点を加えている。


おや、地上では雨が止んだようだ。先に天上の彼らに問いを与えてしまった彼女は、食物を買いに出かけている。彼女の表情は安らいでいて、むしろ満たされている。天上の彼らも同じだ。はてさて、私には何も起きていないように見えるのだがね。



作品名:大いなる談話 作家名:桐生甘太郎