大いなる談話
彼らの遥か下で誰かがぽつりとつぶやいたことが、彼らの議論に火を点けてしまった。しかしその人物には責任を取ることができないし、それを知る事もない。
「「1分間は60秒」、ね。特殊相対性理論を出さなきゃ、確かにそうよね…あーあ。そんなこと言われたって頭痛は治らないし雨やまないから、ご飯買いにも行けない…それに、そんなの、何の役に立つのよ…5秒後に死んだら満足できないもん…」
その女性のつぶやきが、雲の上に居る彼らにそれぞれ思念として届いて聴こえてしまった。今日は珍しく、ルネ坊ちゃまの開いた宴席の日だ。“坊ちゃま”は礼儀と冗談を上手く使い分けられるので、皆から歓迎されている。しかし、イマヌエルはそこに行くのが苦痛だった。彼は食事の席での哲学的な対話を避けたいのに、デカルトの誘いは断れないからだ。しかしイマヌエルは今日に限って、こう考えていた。
“この疑問には…ある種の“意味的感覚”があるように思われる…”