7つの夢の物語
第2夜 三角形の重心
三角形の重心の求め方を質問された。自分は、角の二等分線の交点が重心だと相手に説明をした。
相手が礼を言って去った直後に、目が覚めた。今のやり取りは夢の中の出来事だった。
布団の中でその夢を反芻していて気がついた。角の二等分線の交点は、内心である。重心は、中線(向かい合う辺の中点に向かって引いた線)の交点であった。
夢の中とはいえ、相手に間違ったことを教えてしまった。申し訳のないことをしたが、夢の中に訂正しに行くわけにもいかない。
しかし……。先ほどの質問は夢の中の話である。もしかしたら、夢の世界では、角の二等分線の交点が、三角形の重心である可能性もあるのではないか。ただの言葉の問題ということもあるだろう。が、もし、いわゆる内心がこの世界でいうところの重心と同じ意味で成り立つ世界があるとすれば、それはどんな世界か。おそらく「重さ」という概念がこの世界と違っていると考えることができるだろう。
夢の世界における三角形の重心とは何か。残念ながらこの問いのヒントとなるような夢は、絶えて見ていない。